研究課題/領域番号 |
25462272
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
篠島 直樹 熊本大学, 医学部附属病院, その他 (50648269)
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研究分担者 |
倉津 純一 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (20145296) [辞退]
中村 英夫 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30359963)
秀 拓一郎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40421820)
矢野 茂敏 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (60332871)
牧野 敬史 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (90381011)
黒田 順一郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (90536731)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グリオーマ幹細胞(GICs) / 悪性グリオーマ / 膠芽腫 / 放射線壊死 / Niche / CD44 / 再発 |
研究実績の概要 |
悪性グリオーマの代表、膠芽腫の治療抵抗性の原因は分裂休止期にあるグリオーマ幹細胞(glioma initiating cells, GICs)の存在とされている。治療により分裂期にある通常の腫瘍細胞が死滅するのに対し、GICsは休止期にあるがゆえ治療に反応せず生存し続け、ある時休止期から細胞周期に入り分裂増殖し、その結果再発すると考えられている。しかし再発前段階での治療後組織を得ることは臨床的に困難なため、再発のメカニズムについては不明である。GICsと再発のメカニズムについて研究を遂行した。 {方法}膠芽腫の治療後まだ再発していない段階の組織として、放射線壊死と診断された4例の組織を用いた(2例は1年以内に再発、残り2例は非再発)。 {結果}壊死組織中の細胞のほとんどは細胞周期マーカーであるKi-67は陰性で、幹細胞マーカー(CD133、SOX2)陽性の細胞が4例全例で認められた。幹細胞マーカー陽性細胞領域のFISHでは10番染色体異常の細胞が高頻度に認められたことから、幹細胞マーカー陽性細胞は腫瘍細胞即ちGICsと考えられ、再発の有無に関わらず全例でGICsが存在した。GICs存在領域のレーザーマイクロダイセクション、質量分析を行い、再発例でCD44が高発現していることに注目した。再発例でGICsの近傍にはSOX2陰性CD44陽性間質細胞が多数存在した。CD44ノックアウトマウス由来cancer associated fibroblasts(CD44ko-CAFs)と野生型マウス由来のCAFs(wt-CAFs)から得た培養上清でhuman GIC linesを培養したところ、CD44ko-CAFs に比べwt-CAFs由来の培養上清で細胞増殖能やspheres形成能が有意に亢進した。CD44陽性間質細胞がGICsのNiche細胞として再発・再増大に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD44ノックアウトマウス由来cancer associated fibroblasts(CD44ko-CAFs)と野生型マウス由来CAFs(wt-CAFs)を用い、CD44陽性間質細胞がGICsの増殖を制御している可能性を見出した。培養上清からGICsの増殖に関与する分子の同定を試みる予定である。同定できればその分子を標的とした治療、即ち幹細胞nicheを標的とした治療が有望となると思われる。以上よりおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
GICsの増殖能やspheres形成能の制御に関与する分子の同定を行う。 CD44に対するshRNAでwt-CAFsからCD44 knocked down細胞株を作製する(wt-CAFs-CD44-KD)。そのwt-CAFs-CD44-KD から得た培養上清でGICsの細胞増殖能やspheres形成能がwt-CAFsに比べ低下することを確認する。CD44ノックアウトマウス由来CD44ko-CAFs 、wt-CAFs 、wt-CAFs-CD44-KDから得た培養上清の質量分析をそれぞれ行い、GICsの増殖能やspheres形成能の亢進に関与する分子の絞り込みを行う。候補分子Xに対するshRNAで上記同様にwt-CAFsからknocked down細胞株を作製し(wt-CAFs-X-KD)、その細胞から得た培養上清でGICsを培養する。GICsの増殖能やspheres形成能の低下が認められれば、その分子Xが治療標的分子の有力な候補の一つと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費の問題や新知見により当初の計画を修正したことと研究以外の診療業務などで計画遂行が遅延したため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬・消耗品の購入と論文投稿料に使用予定。
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