研究課題
悪性gliomaの代表である膠芽腫は生存期間中央値が約15ヶ月と難治性である。その治療抵抗性の機序の一つに分裂休止期にあるグリオーマ幹細胞(glioma initiating cells, GICs)の存在が示唆されている。がん標準治療である放射線・化学療法は細胞周期にある増殖が盛んな細胞に対して効果を発するが、休止期にある細胞に対しては無効である。従って放射線・化学療法では通常の腫瘍細胞は死滅するが、GICsは休止期にあるため生存し続け、何らかの機序により休止期から細胞周期に入り分裂増殖し、その結果再発すると考えられている。再発の機序を解明するには再発前段階の治療後組織が必要であるが、再発前の検体を得ることは臨床的に困難である。そこで膠芽腫治療後に画像上再発が疑われ手術摘出したが、病理組織上再発でなく放射線壊死と診断された4症例を再発前段階とした。放射線壊死診断後に2例が再発、残る2例が非再発であったがそれら組織を比較検討した。免疫染色、FISH(10番染色体)を行い、再発の有無に関わらず全例でGICsが存在した。また質量分析で、再発組織でCD44が高発現していた。蛍光多重染色を行い再発例でGICsの近傍には幹細胞マーカー陰性のCD44陽性間質細胞が多数存在した。CD44 knockout mice由来cancer associated fibroblasts(CD44ko-CAFs)とwild type miceのCAFs(wt-CAFs)から得た培養上清でヒト 膠芽腫由来GIC linesを培養したところ、CD44ko-CAFs に比べwt-CAFs由来培養上清で細胞増殖能やspheres形成能が有意に亢進した。CD44陽性間質細胞がGICsのNiche細胞として再発・再増大に関与している可能性が示唆された。再発・再増大に関与する分子の同定を行うため、質量分析に先立ちwt-CAFsから得た培養上清の限外濾過フィルター処理を行い分子量のしぼりこみを行った。