研究課題/領域番号 |
25462273
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中村 英夫 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30359963)
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研究分担者 |
倉津 純一 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (20145296)
秀 拓一郎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40421820)
荒木 令江 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (80253722)
牧野 敬史 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (90381011)
黒田 順一郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (90536731)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グリオーマ幹細胞 / 細胞膜透過性ペプチド / 腫瘍特異的細胞死 / p53 C末端ペプチド / オートファジー細胞死 |
研究概要 |
本研究は、放射線治療および化学療法に抵抗性を示すグリオーマ癌幹細胞(Glioma stem cell,以下GSCと示す)に効果的な治療法の開発を目的としており、われわれはこれに対して膜透過性ペプチドを用いる方法を選択した。 以前までの研究で、フロックスハウスウイルス (FHV) 由来の塩基性ペプチドが細胞内導入効率が高いことが明らかになっており、膜透過性ドメインにこのFHVとp53タンパクのC末端ペプチドを結合させた膜透過性ペプチド(以後Pas- FHV-p53C'と示す)を用いていくつかの実験をおこなった。 GSCを患者手術サンプルより継代培養して獲得していたが、継代培養を続けることによってGSCの性質変化が認められることがわかった。このため、従来の方法から、手術サンプルを継代培養しないで、そのままヌードマウスの皮下に植え込み腫瘍を増大させてGSCを得るという方法に転換した。この方法によってGSCの性質を保ったままGSCを増やして濃縮することができた。このGSCに対してPas- FHV-p53C'を投与するとGSCにオートファジー細胞死を誘導できることは確認できているが、そのメカニズムはよくわかっていないため、まず細胞死が誘導される時の分子の変化と病理学的変化を観察した。電子顕微鏡にてオートファゴゾームがつぶれたような変性した小胞が多く観察されたことからオートファジー細胞死には間違いないことは確認できたために、この現象をもっと簡便に証明できる分子の変化を捉えるべく、いくつかのオートファジー関連分子の発現の変化を遺伝子発現と蛋白発現レベルで解析をおこなっている。以前として、まだいろいろなシステムを構築している段階であるが、今後は少しずつ実験結果が蓄積されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一言に細胞死といっても、それがどのようなメカニズムで起こっているかということを証明することは比較的難しい。主に、培養細胞にての実験が主体であるために細胞死が起こった場合、本当に我々が使用している膜透過性ペプチドの効果なのかどうかを判断するシステムの構築に時間を費やした。培養細胞は培養条件によってその生存が左右されやすく、毎回の実験で同じ結果が出ないことが起こる。その原因を克服しつつ、コントロールと比較して明らかに目的とする細胞死の誘導条件の確立が整ってきている。またグリオーマ幹細胞(GSC)の樹立も比較的困難であり、現在はすべて手術検体から得られた腫瘍サンプルをヌードマウスを使って濃縮する方法に変換した。この方法は、ある程度安定したGSCを細胞死の実験に使用するまでにかなりの時間を要する。
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今後の研究の推進方策 |
オートファジー細胞死の再現性のある実験システムの構築が、まず課題であるが徐々に安定した結果を得られるようになってきている。このシステムは今後の研究の根幹部分であるために、より簡便の確認できるシステムとしておきたいので、更なる効率よいシステム構築を平行して行う計画である。 また、最終的な本研究の目的は、ウイルスを用いた治療と違った安全性の高い方法での臨床応用であり、それに少しでも近づけるような結果をだすことである。最も効果的な膜透過性ペプチドを探索しつつ、それを用いたGSCに対する殺細胞効果を最大限得られるように、いろいろな実験の条件設定を確立しておく必要がある。条件設定が整ったあとに動物実験へと移行したいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に動物実験などで経費がかさむと考えられ、小額であるが次年度に繰り越した。 次年度の研究経費としては、動物実験などに経費が必要と思われるので、それに使用したい。
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