研究課題/領域番号 |
25462277
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
永根 基雄 杏林大学, 医学部, 教授 (60327468)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳腫瘍 / 神経膠腫 / PARP阻害剤 / temozolomide耐性 |
研究概要 |
悪性神経膠腫の標準治療薬はテモゾロミド(TMZ)であるが,DNA修復酵素MGMTが高発現する腫瘍細胞ではTMZによるO6-methylguanineを介する治療効果が減弱し、早期に再発・増悪を来す.今回,我々はTMZによる他のDNAメチル化病巣(N3, 7-methylpurines)に注目し,その病巣修復上中心的役割を果たすPARP-1を主として阻害することでTMZ耐性の克服を図ることを目的とし、PARP阻害剤であるABT-888の抗腫瘍効果及び化学療法剤,特にTMZ,との併用効果をin vitro及びin vivoにて検証する。平成25年度はAustralia、Sidney市のLowy Cancer Research Centre、Cure For Life Foundation Neuro-oncology LaboratoryのProf. Kerrie L McDonaldと共同研究の体制で研究を遂行した。 ・ ヒト・グリオーマ細胞株(腫瘍摘出術にて確立された株含め)を用いてABT-888の治療効果をMTSアッセイにて評価した。MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化の有無を確認し、MGMTメチル化(+)群ではABT-888によるIC50値の平均は60 uMであったのに対し、MGMT非メチル化群では120 uMと相対的に抵抗性を示した。 ・ ABT-888とTMZの併用療法を行うと、MGMTメチル化群、非メチル化群ともに相乗的増殖抑制効果が認められた。更に、再発腫瘍から樹立された細胞株(ともにMGMT非メチル化)ではともに相乗効果の増強が見られた。また、ABT-888と放射線治療の併用を行うと、TMZと同様にABT-888により放射線治療の増強効果が認められ、その効果はMGMTのstatusとは無関係であった。 ・ 細胞株の内、TMZ治療後の耐性を獲得した株(TMZR株)を用いてABT-888単独療法への感受性を検討したが、TMZ耐性株でABT-888への耐性亢進は認められなかった。TMZR株では、しかしABT-888とTMZの併用療法により強い相乗的治療効果が認められた。更にABT-888治療によりPARの阻害が生じ、TMZとの併用によりDNA傷害の指標であるH2AXの誘導が併用療法で最も強く認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・共同研究を行っているAustraliaのProf. Kerrie L McDonaldの協力の下、本研究の基盤となるin vitroでの各治療とそのアッセイの評価を行うことができたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
・in vitroアッセイを更に詳細に追加施行すること。細胞株を増やし、細胞株間の相違点もふまえた解釈を行う。 ・マウス腫瘍モデルを用いた実験を開始し、TMZ耐性の克服がABT-888によりどの程度認められるかを検証していく。Vivo実験に必要なABT-888はAbbVie社よりMTA締結の上提供して頂いている。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は共同研究を行っているAustraliaのProf. Kerrie L. McDonald Labとの協力の下、実験に必要な消耗品の購入経費が若干少額で実験を実施することができたため。 次年度より動物実験を中心の研究が計画されているため、動物費用が多く見込まれている。
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