研究課題/領域番号 |
25462283
|
研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
市村 幸一 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40231146)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 膠芽腫 / グリオーマ / 次世代シークエンス / マイクロアレイ / CGH / IonTorrent |
研究概要 |
本研究は、膠芽腫の新たな予後または治療効果予測因子となる分子腫瘍マーカーを同定することを目的としている。平成25年度は神経膠腫(グリオーマ)の遺伝子変異をスクリーニングするプラットフォームとして50例の膠芽腫を選択し(GBM50)、また次世代シークエンスの一つであるIonTorrent Protonシステムを検証した。21の遺伝子に対してスクリーニングパネルを作成し、脳腫瘍検体において変異を検索し、サンガーシークエンス、パイロシークエンスなど他の方法と比較したところ、高い一致率を得た。Glioma Mutation Screening Panel(GMSP)については平成25年度中に米国がんゲノムアトラスプロジェクト(TCGA)から大規模シークエンスデータが発表された(Brennan, Cell 2013)ため、このデータをもとに遺伝子パネルのデザインを再検討している。 GMSPの準備と並行してグリオーマでよく知られている遺伝子の変異をサンガーシークエンスまたはパイロシークエンスを用いて調べた。その結果グリオーマにおいてテロメラーゼの逆転写酵素であるTERTのプロモーター領域に高頻度に点突然変異が見られることを発見した。GBM50の膠芽腫においても58%と極めて高頻度にTERTの変異を認めた。またIDH1変異を10%、TP53変異を28%に認めた。 一方CGHマイクロアレイについては予定を前倒しして平成25年度に行った。50例の膠芽腫(GBM50)を含む81例のグリオーマに対し、アジレント社の8x60kのアレイを用いて全ゲノム的にコピー数変異を探索した。その結果GBM50では28%にEGFRの増幅、54%にCDKN2Aの相同性欠失、22%にCDK4の増幅、12%にMDM2の増幅を認めた。染色体1pと19qの共欠失は乏突起膠腫の55%に認めたが、GBM50においては2例(4%)のみであった。 以上のように、膠芽腫において単一の遺伝子としてはTERTプロモーターの点突然変異が最も頻度の高い遺伝子異常であることを発見した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では膠芽腫で高頻度に見られる遺伝子変異を効率よくスクリーニングするための遺伝子パネルを平成25年度に作成することを計画していた。しかし、実際の実験にはより多くの遺伝子を多数の検体で精査するために、当初予定していたよりもさらにハイスループットのIonTorrent Protonという新しい次世代シークエンスのシステムを使用することにしたため、別の腫瘍コホートで予備実験を行うこととなった。予備実験は完了し、IonTorrent Protonの有用性が確認された。遺伝子パネルについては並行して検討を重ねていたが、平成25年度中に膠芽腫において大規模ゲノム解析の結果がTCGAから発表されたため、その結果を踏まえて遺伝子パネルを再検討している。一方で平成26年度に施行予定であったCGHマイクロアレイについては前倒しで行い、実験を完了した。さらにはIDH1, TP53などの遺伝子について個別に解析を行い、また昨年度当研究室で新たに発見したTERTプロモーター領域の点突然変異の解析も行った。以上より、総合的には計画は順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は遺伝子パネル(GMSP)を構築し、IonTorrent Protonにて変異スクリーニングを開始する体制を整える。また発現解析を行うためのプラットフォームの選定を行う。候補としてはアジレント社のマイクロアレイなどが検討されている。またGBM50のコホートで得られた所見を検証するための独立した腫瘍のコホートを共同研究を通じて100例以上集める。最終的には分子所見と生存との関係を解析し、治療、年齢に応じた予後・治療効果予知因子の開発を目指す。
|