研究課題
今回、骨粗鬆症薬の一つとして本邦で使用されている新規活性型ビタミンD3(エルデカルシトール)が、骨密度維持だけではなく、筋にも作用することで転倒を予防し、高齢者の骨折を抑制するのではないか、という点に着目した。本研究の目的は、動物実験により、エルデカルシトールの筋に対する作用を明らかにすることである。実験は、ラットを用いたステロイド骨粗鬆症モデルに、従来の活性型ビタミンD3薬(アルファカルシドール)またはエルデカルシトールを2週または4週間投与し、骨密度測定の他、筋張力、筋疲労度、筋線維の組成および筋の増殖・分化に関わる遺伝子解析を行った。実験結果として、2週投与では、アルファカルシドール(以下、ALF)で骨密度の有意な増加を認めた。また、遺伝子解析では、エルデカルシトール(以下、ELD)で一部の遺伝子発現量の増加傾向を示した。4週投与では、骨粗鬆症モデルと比較し、ALFおよびELDの骨粗鬆症モデルで、骨密度低下を抑制する効果を認めた。筋においては、骨粗鬆症モデルと比較し、ELDの骨粗鬆症モデルでは筋線維断面積の有意な増加が認められた。平成27年度は、ELDを投与したラットの筋線維断面積をI型およびII型筋線維に分けて、骨粗鬆症モデルと比較した。実験結果として、4週間ELDを投与した群のII型筋線維断面積が、骨粗鬆症モデルと比較し、有意に高値を示した。以上の結果より、活性型ビタミンD薬が骨密度を維持する効果を示した他に、ELDが投与初期の段階で筋分化遺伝子の発現を促すことで、その後、筋線維の萎縮を抑制する可能性を示した。ビタミンDの筋に対する作用機序は不明であったが、本研究において、ELDの筋に対する作用機序の一部について明らかにできたのではないかと考えられる。
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Journal of Bone and Mineral Metabolism
巻: 34 ページ: 171-178
10.1007/s00774-015-0664-4