研究課題
先天性多発性関節拘縮症(AMC)は、生まれながらに四肢の複数の関節が拘縮してしまう疾患である。環境要因及び遺伝的要因を含めて、複数の発症要因が提唱されているが、その遺伝学的および分子生物学的な発症メカニズムはほとんど不明である。よって、本計画では、関節拘縮を示すモデルマウスを用いて、治療へ繋がるAMC発症の分子機構の解明を試みる。これには、四肢間葉系細胞特異的なCtdnep1遺伝子ノックアウトマウスを用い、in vivoの系および肢芽間葉系細胞のマイクロマスカルチャーで検討を行った。関節組織におけるCtdnep1発現パターンを、LacZノックインマウスを用いて検討した結果、靭帯に強いシグナルが検出された。3週齢の条件的Ctdnep1ノックアウトマウスの組織学的解析を行った。大腿骨近位部の軟骨細胞が異常な増殖を示し、軟骨塊を形成していた。筋肉組織は萎縮していたが、筋肉組織の形成は観察された。一方、マイクロマスカルチャーで遺伝子発現を調べると、軟骨細胞マーカー遺伝子は増加し、腱特異的転写因子の発現は有意な変化は無かったが、筋肉特異的転写因子の遺伝子発現が減少していた。軟骨形成においては、Ctdnep1は、TGF-betaシグナルの抑制因子として作用するので、今後は、条件的Ctdnep1ノックアウトマウスの関節拘縮の原因が、TGF-betaシグナルの亢進によるかどうかを、TGF-betaシグナル阻害薬の投与により検討する。
3: やや遅れている
本来は、平成25年度からCtdnep1ノックアウトマウスの関節拘縮の表現型に焦点を絞って研究を展開する予定であったが、骨格発生に関する論文の追加実験にかなりの労力をとられており、計画通りに実施できていない。今後、現在投稿中の論文の追加実験を終了させることにより、関節拘縮の解析に移行したいと考えている。
平成26年度より筑波大学に異動になり、これまでの研究を継続させるための研究環境を整える必要がある。特に、マウスの移動及びマウスの飼育を再開させるための手続きにかなりの時間を要することになり、マウス個体を用いたin vivo実験は研究計画通りに進行しない可能性がある。したがって、比較的研究環境を整えやすいin vitroの研究に力を入れて推進する計画である。
現在、論文の追加実験を行っており、緊急に必要となる試薬等が想定されたこと、及び、マウス飼育用の餌と床敷などの物品の注文が次年度の4月早々に想定されたこと、等の理由から次年度使用額が生じた。追加実験のために緊急に必要になった試薬の購入およびマウス飼育用の物品の購入を行う。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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http://www.tmd.ac.jp/press-release/20140204/index.html