研究課題
Dullard/Ctdnep1遺伝子は、脱リン酸化酵素をコードし、骨形成因子(BMP)シグナルを抑制する分子として報告された。BMPは軟骨細胞ならびに骨芽細胞の分化を強力に促進する分子である一方、骨格形成には、BMPシグナルを抑制するシステムも存在している。さらに、近年、BMPシグナルが筋肉量を正に制御するということも報告されている。したがって、Dullard遺伝子が筋・骨格形成において、重要な役割を果たすことが推測された。そこで、発生初期の胸骨および四肢の間葉系細胞特異的Prx1-CreマウスとDullard floxマウスを交配させ、発生期の四肢の間葉系細胞特異的Dullard欠損マウスを作製した。その結果、組織特異的Dullard欠損マウスは、四肢ならびに胸骨の骨化遅延を呈し、さらに、関節拘縮、歩行障害を示し、約8割の組織特異的Dullard欠損マウスは3週間以内に死亡した。組織特異的Dullard欠損マウスの組織ならびに初代培養細胞を用いた実験から、組織特異的Dullard欠損マウスでは、BMPシグナルは正常よりもやや弱い傾向であったが、TGF-βシグナルが亢進していることが明らかになった。実際、TGF-βシグナル阻害剤の投与により、骨格異常が回復した。一方、筋肉においては、筋繊維は形成されていたが、野生型に比べると、発達が障害されていた。細胞培養実験から、Dullard欠損下では、筋肉系遺伝子の発現が著しく低下しており、筋芽細胞におけるリン酸化Smad1も低下していた。これは、Dullard欠損により、筋芽細胞においてTGF-βシグナルが亢進した結果、BMPシグナルが抑制されたことが原因であると推測された。以上の結果から、Dullardは、筋肉系においては、TGF-βシグナルを抑制することによってBMPシグナルを維持し、筋肉形成に重要な役割を果たすことが示唆された。
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