研究概要 |
脊髄損傷に対する骨髄間質細胞 (BMSC)移植において、BMSCの生存率と脊髄損傷後の機能回復には相関があるとされる一方で、組織生着率が低いことは大きな問題点である。本研究では、損傷後早期の抗IL-6抗体投与併用が、移植BMSCの生存率や組織生着に与える影響について検討した。 ①移植時期による生存率の検討:C57BL/6マウスを用い、胸髄圧挫損傷モデルを作成した。損傷後1, 3, 7, 14日に、C57BL/6-Tg (グリーンマウス)大腿骨より採取したBMSCを損傷部に移植し、移植後1, 3, 7, 14, 28日の生存率を評価した。生存率は、損傷後早期(1, 3日)移植群が、亜急性期(7, 14日)移植群より有意に高く、損傷後3日にBMSC移植を行った群が最も高かった。移植後14日から急速に生存率は低下し、移植後28日にはほとんど残存していなかった。 ②抗IL-6抗体投与併用がBMSC生存率に与える影響:損傷後3日目にBMSCを移植した群を用い、損傷直後に抗IL-6抗体を腹腔内投与し、mouse IgGを投与した群(control群)と比較した。MR16-1併用群では生存率の上昇がみられ、特に移植後28日の生存率は、control群 1.2%、MR16-1投与群 17.8%と大きな差がみられた。損傷後7日以降で、有意な運動機能回復が得られた。また、control群では移植BMSCの分化傾向は確認されなかったが、MR16-1投与群では、NeuN (7.7%)、GFAP (4.8%)との二重陽性細胞がみられた。 今回の結果からは、急性脊髄損傷に対するBMSC移植至適時期は損傷後3日と考えられた。抗IL-6抗体投与は移植BMSCの生存率上昇効果および分化能への影響を及ぼし、移植有効性向上に寄与する可能性があることが示唆された。
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