過去2年間のBMSCの至適移植時期や移植細胞の細胞死のメカニズムに関する研究を受け、最終年度は、当初の研究計画にのっとり、BMSC移植による脊髄損傷後疼痛への影響について検討した。 C57BL/6Nマウスの胸髄圧挫損傷モデルを作成し、同種マウスより採取培養したBMSCを損傷後3日に損傷部に投与し(治療群)、mediumのみを投与した損傷群と比較した。骨髄由来細胞の動態解析のためGFP陽性骨髄細胞を移植したキメラマウスを作成した。 行動学的評価において治療群では損傷群と比べ損傷後2週以降で閾値の上昇がみられた。免疫組織化学的には、損傷後2週で疼痛関連蛋白 (PKC-γ、pCREB)の発現が治療群で低下し、損傷後2週でマイクログリア/マクロファージにおけるMAPK (p-p38、pERK1/2)の発現が治療群で低下していた。骨髄由来マクロファージは損傷後14日に細胞集積のピークがみられたが、治療群では集積は縮小しており、flow cytometryにおいても同様の結果が得られた。BSCBの機能評価では、albuminの漏出、PDGFR-αの発現は治療群で損傷後1週において抑制され、炎症性サイトカイン (TNF-α、IL-6、MMP9)、マクロファージ遊走因子 (CCL2、CCL5、CXCL10)は治療群で低下していた。 以上の結果から、損傷後早期のBMSC移植により、BSCB機能の維持、骨髄由来マクロファージの浸潤の抑制、さらに脊髄内のマイクログリア、骨髄由来マクロファージのMAPK活性も抑制されており、痛覚閾値の上昇および二次ニューロン内の疼痛関連蛋白の発現が抑制されたことより、脊髄損傷後疼痛の抑制効果をもたらした可能性が実験的に示唆された。
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