研究実績の概要 |
二分脊椎症は出産1,000に対し約1例の頻度で発生し、脊髄内にも傷害が及び、運動、排尿障害、下肢の変形等が起こる整形外科等の領域で重要な疾患である。しかし、これまで適切なモデル動物が開発されていなかった為に充分な病態解明がなされていない。我々は、手術により脊髄を再開裂し、人間同様に歩行異常を示す二分脊椎モデル動物を効率良く作成することに成功しその病態を報告した。さらに、本モデルを用い二分脊椎の歩行障害が、運動神経、および感覚神経回路の異常にあることを初めて明らかにした。本手術を開発した研究者に手術手技の指導を受け、すでに30例の二分脊椎ヒヨコの作製に成功している。 これを用い、カスパーゼの免疫染色により二分脊椎ヒヨコの脊髄に生直前から神経障害が起こり始めていることを確認した。また、興奮性のグルタミン酸、アセチルコリン(ChaT)と、抑制性のGABAの増減に注目して解析し、これらをまとめて投稿準備中である。 同時に運動障害の程度を動画データとして投稿ができるようデジタルカメラで記録した。画像のみならず鳴き声も音声解析を行い、正常と二分脊椎では異なることを明らかにした。 一方で、トレーサーによる解析は時間が掛かる実験であるが、すでに共同研究者である今村教授の研究室との基礎実験を開始した。従来、脊髄全体に分散する神経回路を可視化することは、ほとんど不可能であった。しかし、今村教授が当医学部に導入した多光子顕微鏡により、これらの神経回路全体を可視化できることが判明した。Horiuchiらの論文では、後索神経線維を可視化し、その変化を捉えることに成功し、報告した。
|