研究実績の概要 |
本研究の目的は、人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cell以下iPS細胞)の移植再生医療を末梢神経再生に応用し、自家神経移植の代替治療となる可能性を秘めるiPS細胞ハイブリッド型人工神経の長期成績とその安全性について検証し、末梢神経再生の促進メカニズムを解明することである。 平成25年度はiPS細胞移植による末梢神経再生の促進メカニズムを解明するために実験モデルを作製した。GFP遺伝子をあらかじめノックインしたマウスiPS細胞を用いて、第2世代神経前駆細胞を分化誘導した。これを人工神経に生着させてiPS細胞ハイブリッド型人工神経を作製した。マウスの坐骨神経欠損に対して、iPS細胞ハイブリッド型人工神経で移植再建を行い、移植後4, 7, 14日、4, 8, 12, 48週で移植した人工神経を採取し、平成26・27年度に組織学的評価を行った。移植iPS細胞は、移植後14日目においてもシュワン様細胞として人工神経内に残存しており、再生軸索の周囲に存在していた。 平成26・27年度は、iPS細胞ハイブリッド型人工神経の長期成績と安全性についても検証を行った。マウス坐骨神経欠損モデルに対してiPS細胞ハイブリッド型人工神経は、人工神経単独群と比較して、移植後24週および48週の長期成績においてマウス下肢機能回復が有意に促進し、組織学的に再生軸索の有意な増大を認めた。またiPS細胞ハイブリッド型人工神経群の組織評価において奇形腫等の腫瘍性病変は認められなかった。
|