研究課題/領域番号 |
25462303
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
筒井 俊二 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70423960)
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研究分担者 |
谷口 亘 関西医療大学, 保健医療学部, 准教授 (20453194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / パッチクランプ / G-CSF / 興奮性シナプス後電流 |
研究概要 |
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が脊髄後角ニューロンの興奮性シナプス伝達に及ぼす影響について、ラット脊髄横断スライスにパッチクランプ法を適応して解析を行った。-70mVの電位固定下に脊髄第II層のニューロンから自発性興奮性シナプス後電流(sEPSC)に対するG-CSFの影響を調べた。G-CSFを100μg/100mlを5分間灌流投与した場合のsEPSCの頻度・振幅の変化率はそれぞれ平均131.2±14.5%, 及び98.6±4.2 %(n=11)であった。平均すると全体的にはsEPSCは頻度が増強傾向にあったがpaired t検定を統計処理上では有意差を認めなかった。この理由として、ニューロンの変化にばらつきがあった可能性が考えられる。個々のニューロンの変化の内訳は頻度、振幅ともに10%以上の変化を有意な変化として判定すると、頻度で増強していたものが45.5%、減少していたものが18.2%、変化なしが36.3%であった。振幅に関しては増強していたものが18.2%、減少していたものが18.2%、変化なしが63.6%であった。G-CSFは脊髄後角レベルでsEPSCの抑制をもたらすと仮説をたてていたが、今回の結果は仮説と異なった。今後、記録ニューロン数を増やし、G-CSFがsEPSCの増強効果を真に有するのか検討を進めていくとともに、抑制性シナプス後電流に対する検討や脊髄損傷モデルを用いた検討を進めていく予定にしている。また、灌流投与のような短時間で変化を観察する実験では、G-CSFの疼痛抑制効果を見いだせない可能性もあるため、くも膜下腔内にG-CSFを髄注したモデルにおける効果の解析なども検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画に沿って、ラット脊髄スライスにパッチクランプ法を適応し、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が脊髄後角ニューロンの興奮性シナプス伝達に及ぼす影響について、解析することができた。この結果、G-CSFは脊髄後角ニューロンの興奮性シナプス伝達を増強する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度で得られた結果はG-CSFが鎮痛機序を賦活するという当初の仮説とは矛盾する結果であった。平成26年度はもう少しデータ数を増やし、G-CSFがsEPSCの増強効果を真に有するのか検討を進めていくとともに、抑制性シナプス後電流に対する検討や脊髄損傷モデルを用いたin vivoパッチクランプでの検討を進めていく予定にしている。また、灌流投与のような短時間で変化を観察する実験では、G-CSFの疼痛抑制効果を見いだせない可能性もあるため、くも膜下腔内にG-CSFを髄注したモデルにおける効果の解析なども検討していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
未購入機器があるため 平成26年度の実験計画に沿って研究をすすめる。動物代・薬品代等に使用する予定である。また研究成果に応じて、学会等での研究成果発表に研究費を使用する予定である。
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