研究課題/領域番号 |
25462304
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
岩崎 博 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70438274)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 腰椎椎間孔部狭窄症 / 腰部脊柱管狭窄症 / 腰椎 / 電気生理学的診断 / 遠位潜時 |
研究概要 |
[研究の具体的内容] これまでに我々が考案し行ってきた椎間孔部狭窄の電気生理学的手法による診断を継続し DATAの蓄積をおこなった。これまでL4/5脊柱管内およびL5/Sの椎間孔部(椎間孔内、椎間孔外)の両方で圧迫される重複病変(double lesion)の頻度も不明であったが、これまでのDATA蓄積により判明してきた。第5腰神経症状を呈する240の手術症例中、画像上の重複病変が15.4%、電気診断陽性(L5/S椎間孔部病変あり)症例が10%という結果であった。つまり第5腰神経が2カ所で圧迫される病態が予想以上に多いことがわかった。またDATAの蓄積により、当科が開発した新しい腰椎椎間孔部狭窄症の電気診断法(Distal motor latency: DML法)が有用であることも証明でき、Asian Spine Journalにアクセプトされた。このDML法は2つの診断基準があり、遠位潜時を用いた診断はROC曲線下面積0.73、特異度92%、陽性反応的中度86.6%であり、遠位潜時の健患差を用いた診断では0.79、88%、88.9%であることが判明した。 [本研究の意義] 本検査法が確立されれば術後成績不良例の減少が確実に予想されうる。また、腰部脊柱管狭窄症の治療方針の適正化にもつながり,国民医療費の抑制にも貢献できると考えている。 [本研究の重要性] 椎間孔部病変の病態把握が不十分のままL4/5脊柱管内のみの手術を施行した場合には10%もの患者が満足な手術結果を得られないことが判明した。そしてこの電気生理学的診断方法が有用であることも証明できたため、この検査を行い結果に応じて手術部位の追加をおこなえば術後の症状遺残や多数回手術が激減する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腰部脊柱管狭窄症、特に腰椎椎間孔狭窄症の手術症例に対して電気生理学的検査を 継続しておこない、DATAの蓄積を継続している。 前述のごとく第5腰神経症状を呈する240の手術症例中、画像上の重複病変が15.4%、電気診断陽性(L5/S椎間孔部病変あり)症例が10%という結果であり、第5腰神経が2カ所で圧迫される病態が予想以上に多いことが判明した。
|
今後の研究の推進方策 |
腰椎椎間孔部狭窄症の新しい電気生理学的診断方法確立のためにさらなる症例の蓄積を行う。 確立された診断基準をもとに障害部位診断を行い、術中所見および術後神経症状の改善から本検査法の有用性を検討する。 新しい電極開発が困難な際には既存の現在使用中である電極の使用を継続し、その検査法に改良を加えることで対応したいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
情報収集のため参加を予定していた第35回脊椎機能診断研究会(東京)に参加することができなくなったため、その旅費・宿泊費・学会参加費などが不要となった。 購入を予定したいたソフトウェア-(Design standard)が大学生協からの購入で定価より安く購入することが可能となった。 以上により当該助成金が生じた。 本研究のめざす電気生理学的手法を用いた神経機能診断法に基づく新しい手術治療戦略の確立はこれまでの腰部脊柱管狭窄症の治療を根本から見直す画期的な方法となり得るため、本研究結果を国内および国外の学会など多方面に発表することが重要であると考えている。そのため雑誌投稿および学会発表を継続していく予定であり、それらの費用の一部に使用予定である。
|