研究課題/領域番号 |
25462312
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀和 東京医科大学, 医学部, 講師 (40317871)
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研究分担者 |
澤地 恭昇 東京医科大学, 医学部, ポストドクター (20571152)
遠藤 健司 東京医科大学, 医学部, 講師 (90266479)
小坂 泰一 東京医科大学, 医学部, 講師 (10328213)
山本 謙吾 東京医科大学, 医学部, 教授 (10246316)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経成長因子 / 椎間板性腰痛 / プロスタグランジン / 神経進入 |
研究概要 |
慢性腰痛は社会医学的に大きな問題となっており,椎間板の変性に伴い疼痛伝達を担う神経線維が椎間板内側に侵入し,さらに疼痛感作が行われることが慢性腰痛の病態の1つであると考えられている. Prostaglandin (PG)は慢性腰痛治療に用いられることがあるが,その有効性における分子機構は不明である.本研究の目的は,椎間板変性を背景とした慢性腰痛に対する各種PGの反応を,ヒト椎間板由来の細胞を用いて細胞外基質分解酵素および神経成長因子(NGF)の遺伝子発現調節機構を明らかにし,慢性腰痛予防,慢性腰痛に対する薬学的治療の可能性について検討することである. 当該年度は,ヒト椎間板細胞培養法を確立すべく,脊椎手術時に採取した椎間板より単離した細胞を2次元またはアルギン酸ビーズによる3次元培養し,炎症性サイトカインであるIL-1に対するNGFおよび細胞外基質分解酵素群発現に対する応答性を比較検討した.その結果,培養方法の違いによる発現調節に差異は認められず,以降の研究は2次元培養を用いて遂行することとした. 培養ヒト椎間板細胞を,各種プロスタノイド (PGE1, PGE2, PGF2a, PGI2, PGD2)またはPGE1誘導体であるLimaprost存在下IL-1で炎症刺激し,NGFおよび細胞外基質分解酵素発現に対する作用を比較検討した.その結果,PGE2,PGE1,LimaprostはNGFおよび細胞外基質分解酵素発現を濃度依存的に抑制したがPGI2による効果は弱く,PGF2aによる作用は認められなかった.一方,PGD2はNGFおよび細胞外基質酵素発現ともに増強させた. 当該年度研究結果より,各種PGはNGFおよび細胞外基質分解酵素発現に対し異なる作用を持つことが判明し,さらに腰痛治療に用いられるPGE1は,NGF発現抑制といった新規薬理効果を持つことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,研究計画通りヒト椎間板細胞の培養法の確立を行い,その培養方法に従い各種プロスタグランジンのNGFおよび細胞外基質分解酵素群発現に対する作用の違いを網羅的に比較検討を行った. 椎間板細胞の各種プロスタグランジンに対する応答性に差異が認められ,特に臨床で腰痛治療に用いられるPGE1およびその誘導体によるNGF発現抑制効果は新規知見であり,同薬剤の新規薬理作用となりうる.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い,PGE2およびPGE1(その誘導体)によるNGFおよび細胞外基質分解酵素郡の発現抑制の分子機構を解明すべく,プロスタグランジン受容体の発現およびその機能解析,さらに細胞内情報伝達経路の解明を試みる予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は,効率よく研究を遂行することができ,予定よりも消耗品等の支出が少なかったため. 次年度は,主に細胞内情報伝達の解析を行うため,各種リン酸化抗体,siRNA,Bio-plex等,比較的高価ではあるが,本研究目的を効率良く遂行する上で有用な消耗品を購入する予定である.
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