受動喫煙ラット腰椎椎間板のプロテオーム解析を試みた。8週間受動喫煙したラット(S8群) 、非喫煙ラット(N8群) 、受動喫煙後4週間喫煙を停止したラット(S8N4群) 、コントロールラット(N12群) を各5頭作製した。腰椎よりnanoLC-MS/MSプロテオーム比較解析、細胞外基質タンパク質の分画について解析を行った。プロテオーム解析では、細胞外基質タンパク質の保持機構に関わるタンパク質群が受動喫煙により発現上昇し、喫煙後禁煙にてアポトーシス感受性亢進に関わるタンパク質が低下した。リボゾーム関連タンパク質が発現亢進しており、禁煙することによってタンパク質合成促進が示唆された。受動喫煙における細胞外基質修復反応、アポトーシス感受性亢進し、受動喫煙後禁煙にてタンパク質合成促進が示唆された。 さらに受動喫煙ラット椎間板変性モデルに対して、脱分化脂肪細胞(dedifferentiated fat cell: DFAT)を静脈内投与することで、椎間板変性を抑制する可能性について検討した。計12頭のSDラット(8週齢)を2群(DFAT群またはPBS群,各群n=6)に分けた。DFAT群はラットDFAT(1×106個/500μl PBS)を、PBS群は500μl PBSを喫煙開始時より2週間間隔で計4回静脈内投与した。受動喫煙8週後の両群の腰椎椎間板髄核を摘出し、プロテオグリカン量を測定した。腰椎椎間板髄核および肺よりRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法にて各種グリコサミノグリカン、コラーゲン、炎症関連サイトカインの遺伝子発現を検討した。プロテオグリカン量は、Control群と比較してPBS群で減少していた。DFAT群はPBS群に比較して増加していた。遺伝子発現変化では、DFAT群はPBS群と比較して髄核のSOX9、アグリカンの有意な発現増加が認められた。また、肺組織におけるDFAT群ではTSG-6、HGFが有意に発現増加していた。受動喫煙ラットにDFATを静脈内投与することにより椎間板変性の進行が抑制されることが示唆された。
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