研究課題/領域番号 |
25462317
|
研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
飛松 好子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院(併任 研究所), 病院長 (20172174)
|
研究分担者 |
緒方 徹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究部長 (00392192)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | バイオマーカー / 脊髄損傷 / 細胞培養 |
研究概要 |
1 後根神経節を用いたin vitro神経損傷モデルとpNF-H測定の実験 神経損傷バイオマーカーpNF-Hは本来軸索内に発現する骨格蛋白であることから、細胞外にこれが移行するには一定のメカニズムが存在すると考えられる。これをin vitroで解析する為にラット後根神経節を培養ディスク上で3週間培養し、十分に神経軸索が伸びたところで物理的に軸索を損傷するモデルを作成した。その結果、培養液中に翌日からpNF-HがELISA法で検出されるようになり、損傷に応じてpNF-Hが細胞外に移行することが確認された。一方、個体レベルの神経損傷では数日間にわたって血中でpNF-Hが検出されるのに比べ今回の培養系で検出される期間は1日のみであった。 また、pNF-Hが損傷を受けた軸索の細胞体側と遠位側のどちらから出ているかを検討する為に、軸索損傷後に培養ディスクを二つに分けて培養する方法を採択した。培養自体は可能であったが、いずれの側からもpNF-Hが検出されないことも多く、今後の検討が必要と考えられた。 2 マウス脊髄損傷モデルの損傷脊髄内でのpNF-Hの輸送経路の探索 一方、同時進行で神経細胞の外に出たpNF-Hが血中に移行するメカニズムの解析を動物個体を用いて検討した。マウス脊髄損傷モデルを作成し、損傷部のpNF-Hの局在を免疫染色によって観察した。pNF-Hは正常部分の軸索内にみられるほか、損傷部周辺では凝集塊となって検出された。一部のpNF-H陽性の凝集塊は貪食マクロファージのマーカーであるIba1と共局在を示していたことから、神経細胞から出たpNF-Hが貪食細胞によって取り込まれている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に計画していた後根神経節の培養実験はさらなる調整を要するものの、ほぼ予定通りのペースで確立し、pNF-Hの検出も可能であった。In vitroの実験系を持つことは当該研究の推進に大きく寄与するものと期待される。一方、動物レベルの検討においても当初の予想に一致してpNF-Hが損傷後に貪食される像が得られており、初年度の成果としては十丁と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
培養実験系においては損傷モデルのさらなる調整を行い、pNF-Hの放出起源が細胞体側にあるのか、末梢側にあるのかの検討を進める。また神経細胞の活性化による変化を検討する為に神経栄養因子の投与を実施し、培養液中に放出されるpNF-Hを観察していく。 また動物個体レベルの検討ではpNF-Hがどの様な状態で血中に循環しているのかを検討するためタンパクレベルの解析、あるいはフローサイトメーターをつかった解析を予定している。具体的には想定される小胞の特性を考慮しマイクロ・パーティクル、またはエキソソームを検出するプロトコールに沿って解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
年度末に計画していた培養実験を、他の実験との兼ね合いで新年度に繰り越したため残金が生じた。 新年度に繰り越された実験を実施する。計画全体に影響はない。
|