研究課題/領域番号 |
25462319
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小野寺 純 北海道大学, 大学病院, 助教 (90374511)
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研究分担者 |
近藤 英司 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (60374724)
安田 和則 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20166507)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腱マトリクス / マクロファージ |
研究概要 |
(目的)アキレス腱損傷早期の治癒過程を独自に作製したMIF遺伝子欠損(KO)マウスと野生型(WT)マウスとの間で生体力学的、組織学的および分子生物学的研究に比較し、腱組織損傷後の治癒過程におけるMIFの役割を明らかにすること。 (方法)MIF KOマウスおよびWTマウスを用いたアキレス腱損傷モデルを開発し、その治癒過程における再生コラーゲン線維束の力学的特性、組織構造、および遺伝子発現の差を検証した。雌8-10週齢のMIF KOマウス45匹、およびコントロールとしてBalb/CのWTマウス45匹を用い、足関節レベルでアキレス腱の全層に横断裂を作製、術後3、6、および12週で屠殺し、両下肢を摘出し各10匹を生体力学的評価へ、各5匹を組織学的評価に供した。生体力学的評価は、各動物の両下肢からアキレス腱―踵骨複合体を摘出しコラゲンファシクルを作成後、断面積はVideo dimension analyserを用いて測定した。引っ張り試験は、コラゲンフィブリルのマイクロ万能試験機で、5 mm/minの速度で複合体を破断させた。組織学的評価は、HE染色およびトルイジンブルー染色を行った。 (結果と考察)1)生体力学的評価を行い、アキレス腱損傷後3週および6週において、MIF KOマウスでは最大破断荷重が有意に低値であることが明らかとなった(p<0.05)。2)組織学的評価として、HE染色を用いた腱の治癒過程を比較し、損傷後3週、6週、および12週のいずれにおいてもMIF KOマウスはWTマウスに比べ、腱自体が肥厚しており膠原線維の配向も不規則であることがわかった。以上の結果は、MIFの存在が腱損傷後の治癒過程において重要な役割を果たしている可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すべての研究者は同一キャンパス内に在籍し、研究者間の連携が容易である。この研究グループはすでに実質的な研究を行っており、本研究計画は多角的に検討されて決定されたため、おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
MIF KOマウスおよびWTマウスを用いたアキレス腱損傷モデルの分子生物学的評価(免疫染色組織評価およびRT-PCR解析)を行う予定である。 (1)本年度に確立した組織学的評価に耐えうる標本作成方法をもとに、未染色標本を用いて、collagen 染色、MMP染色、新生血管評価用染色等を追加し、MIF遺伝子の欠損が与える影響の機序を解明する。 (2)損傷部分の標本を採取し、RNAを抽出してPCR評価を行う。これにより、損傷部分で発現している遺伝子をMIF KOマウスとWTマウス間で比較・解析し、MIFの関与を生物学的に明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度夏から、当施設内の動物飼育施設の全面改築工事が開始され、新しい動物を購入して行う実験に制限があった。このため、動物購入費、飼育費および実験材料経費が予定より小額となり、次年度使用費が生じた。 MIF KOマウスおよびWTマウスを用いたアキレス腱損傷モデルのRT-PCR解析を行う。目的遺伝子は、MIF、I型・III型collagen、TNFα、IL-1β、VEGF、およびMMP-2、9、13であり、両群での遺伝子発現の差を比較、検討する。また、MIF KOマウスにおける腱損傷に対するリコンビナントMIFの局所投与の効果の生体力学的、組織学的および分子生物学的解析として、平成25年度に行なった方法を用い各動物にアキレス腱損傷モデルを作製し、リコンビナントMIFを切離部に投与する。これを、RT-PCR解析および、組織学的評価に用いる。
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