研究課題/領域番号 |
25462322
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柳川 天志 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (40400725)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 間葉性遊走 / アメーバ様遊走 / 転移 / 肉腫 / AMF |
研究概要 |
がん細胞が様々な形態変化をすることにより転移能を獲得することが報告されている。ヒト線維肉腫細胞HT1080はコラーゲンゲル内で三次元培養すると間葉性遊走をする細胞とアメーバ様遊走をする細胞の両者が認められることが知られている。アメーバ様遊走はプロテアーゼ非依存的な遊走でありプロテアーゼ阻害剤によりHT1080細胞には間葉アメーバ転換(MAT)が生じる。今年度はまず細胞運動を促進することが知られているautocrine motility factor (AMF)のMATに対する影響を調べた。 HT1080細胞をtype I コラーゲン内ゲル内に包埋しμ-Slide Chemotaxis3Dで三次元培養した。HT1080細胞にプロテアーゼ阻害剤を用いてアメーバ様形態を示す細胞を誘導した。またアメーバ様形態はRho依存性であるためその下流のROCKの阻害剤Y27632を用いて間葉性形態を示す細胞を誘導した。それぞれにリコンビナントAMFを添加して細胞の形態の変化を調べた。 AMFの単独添加ではアメーバ様形態を示す細胞の割合はコントロールと差はなかった。またプロテアーゼ阻害剤でアメーバ様形態を誘導させた細胞にAMFを添加してもAMF(-)のものに比べ細胞形態に変化はなかった。一方でY27632により間葉性形態を誘導した細胞にAMFを添加すると間葉性形態を示す細胞はAMF(-)のものに比べ半減した。 間葉性形態はRac1依存性でアメーバ様形態はRho依存性であることが知られており、RhoAとRac1の活性のバランスにより運動様式が変化するとされている。今回の実験ではAMFは主にRhoAの活性化を強化することによりアメーバ様形態に誘導することが推察された。 AMFの阻害によりプロテアーゼ阻害剤に抵抗を示す細胞運動を抑制させられる可能性が示された。 またAMFはHSP27によりその発現が制御されていることを示し温熱刺激が二次元培養における運動能、細胞形態の変化を制御することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画予想よりも時間がかかった点、計画と異なるものには以下のものがある。 プロテアーゼ阻害剤によるアメーバ様形態の変化の再現性がやや悪かったため実験系を組み立てるのに予定よりも時間がかかった。また形態変化が100%の細胞に生じるわけではないのでこれをなるべく100%に近づけるように添加薬剤を調整したがこれにも時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
三次元培養において間葉系の形態を示している状態とアメーバ様の形態を示している状態の細胞を回収し発現遺伝子をDNAマイクロアレイ、あるいはRNA sequenceで調べ変化の生じている分子を確認する。発現についてはリアルタイムPCR、ウエスタンブロッティングでも確認する。いくつかの分子が同定出来たらAMTが生じたときにもこれらの分子が変化するかを確認する。さらに他種の腫瘍性細胞株についても同様の分子の発現変化が生じるかを確認し、細胞種によらず普遍的に形態変化に関わる分子を同定する。また、これらの分子が通常の二次元培養においてEMT、あるいはMETにも関わるかを遺伝子導入実験で確認する。 これまで我々が研究してきたAMFは細胞運動にかかわる分子であるため三次元培養下にある細胞の運動に変化を与えるかを確認する。コラーゲンゲルにAMFを添加し線維肉腫細胞の三次元培養を行い、まず細胞形態に変化が生じるかを確認する。AMFは温熱刺激により発現が抑制されることをしめしており、温熱刺激による三次元培養での形態変化も確認する。また低酸素状態ではAMFの発現が増強することが知られており低酸素状態において形態変化が生じるかの確認も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
三月に購入した物品がキャンペーン中で予定したよりも安く購入できたため残額が生じてしまった。 試薬購入(蛋白染色用試薬)に充てる予定である。
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