研究課題/領域番号 |
25462323
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 健之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00583121)
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研究分担者 |
河野 博隆 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20345218)
川口 浩 東京大学, 医学部附属病院, 届出診療医 (40282660)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨・軟部腫瘍 |
研究概要 |
骨巨細胞腫は、若年者に好発する良性骨腫瘍であるが、手術による掻爬術、切除術によっても、再発率は、17~45%と高い。さらに脊椎、仙骨・骨盤発生など手術療法が困難な場合がある。骨巨細胞腫は、多核巨細胞と間質細胞、組織球からなり、間質細胞は、破骨細胞の強力な誘導因子であるRANKLを高発現している。RANKLをターゲットにした治療は、骨粗鬆症および骨転移の分野で発展し、ヒトモノクローナル抗体を用いた治療が確立しているが、骨巨細胞腫に対しても有効性が示唆されてきている。そこで、我々は、RANKLヒトモノクローナル抗体の作用メカニズムについて、および間質細胞のRANKL発現メカニズムを解明することを目的に解析を進めている。本年度は、骨巨細胞腫の症例の集積を進めているところである。うち1例は、自然消失を認め、非典型的な経過をたどったため、今回の解析には含めなかった。上記のため、シークエンサーによる解析はまだ行えていないが、基礎的検討として、採取された細胞を用いて、骨巨細胞腫の間質細胞に対する、抗RANKL抗体の抗腫瘍効果について検討した。抗RANKL抗体を細胞培養系に投与し、CCK-8, BrdUの取り込み率を解析したところ、細胞増殖能には明らかな影響を与えなかった。このことから、臨床的にみられる抗RANKL抗体の作用としては間質細胞に対する直接の抗腫瘍作用ではない可能性が示された。また、臨床的には、ヒトに抗RANKL抗体を投与すると、間質細胞が骨芽細胞系に分化し、骨を形成する傾向にあることが知られているが、細胞培養系では、細胞染色、遺伝子発現レベルで解析したところ抗RANKL抗体による間質細胞の骨芽細胞系への分化誘導はみられなかった。これらの実験は、上記で得られた腫瘍細胞の1つを用いた実験であり、今後も検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、骨巨細胞腫の症例が少なく、採取された検体は3例のみであった。そのうち1例は、自然消失を認め、非典型的な経過をたどったため、今回の解析には含めなかった。手術によって得られた検体を、凍結保存し、さらに凍結切片用に包埋を行った。また初代培養により、腫瘍細胞を培養し保存した。 上記のため、シークエンサーによる解析はまだ行えていないが、基礎的検討として、採取された細胞を用いて、骨巨細胞腫の間質細胞に対する、抗RANKL抗体の抗腫瘍効果について検討した。抗RANKL抗体を細胞培養系に投与し、CCK-8, BrdUの取り込み率を解析したところ、細胞増殖能には明らかな影響を与えなかった。このことから、臨床的にみられる抗RANKL抗体の作用としては間質細胞に対する直接の抗腫瘍作用ではない可能性が示された。また、臨床的には、ヒトに抗RANKL抗体を投与すると、間質細胞が骨芽細胞系に分化し、骨を形成する傾向にあることが知られているが、細胞培養系では、細胞染色、遺伝子発現レベルで解析したところ抗RANKL抗体による間質細胞の骨芽細胞系への分化誘導はみられなかった。これらの実験は、上記で得られた腫瘍細胞の1つを用いた実験であり、今後も他の検体を用いた解析が必要であり、今後予定している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、骨巨細胞腫の検体の収集が当初の予定よりも少なく、解析にたどり着けなかったため、今後は、腫瘍専門病院に協力を依頼し、検体数を増やしていく。 腫瘍検体が集まった段階で、当初予定していた、エキソーム解析、遺伝子発現解析を行う予定である。さらに、RANKL発現メカニズムを解明するために、エピゲノム解析を追加で行う予定である。 抗RANKL抗体の作用メカニズムの検討のため、本年度は、間質細胞のみを採取し、抗腫瘍効果の検討を行ったが、今後は、採取した腫瘍細胞を初期培養し、間質細胞と巨細胞が共存している状態での解析を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
症例が少ないために解析が思うように進まなかったが、次年度以降は専門病院に協力を依頼し、解析を進めていく。 エキソーム解析、遺伝子発現解析、エピゲノム解析などにかかる費用。
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