研究実績の概要 |
多発性外骨腫症(MHE)は,骨幹端部の多発骨軟骨腫を特徴とする遺伝性疾患で,EXT1・2が主原因遺伝子である.本研究の目的は,Prx1CreERT; Ext1flox/floxマウス(Creマウス)を用い骨軟骨腫発生機構について検討する事である.本研究では,MHEで骨軟骨腫が好発する成長軟骨板周囲の軟骨膜組織に注目した.同部位でのExt1の機能を解析するため,Prx1CreERT transgeneに注目した.Prx1CreERT;Rosa26 reporterーマウスを作成、生後1・2日にtamoxifenを腹腔内注射し,LacZ染色を行った.次にCreマウスに対し,生後1・2日にtamoxifenを注射した後,四肢関節形態をSafranin O/Fastgreen染色,X-ray撮影で検討した.更にSox9,β cateninの免疫組織染色を用いて,軟骨膜での同蛋白発現について確認した.In vitroで,マウス間葉系細胞のC3H10T1/2に対し,Ext1発現を抑制後,β cateninの発現をqPCRとIFにて確認後,骨分化についてAlp活性を測定した.結果として、mLacZ染色で,Prx1CreERT transgeneが成長軟骨板周囲軟骨膜に発現している事を確認した.Creマウスは,生後3週で四肢に骨軟骨腫を形成した.同マウスは骨軟骨腫形成前に,軟骨膜でβ cateninの発現が低下し,同部位に異所性軟骨細胞が出現していた.C3H10T1/2はExt1発現を抑制する事で,β cateninの発現が低下し,骨分化が抑制された.今回, 我々は,Creマウスを用い,出生後に成長軟骨板周囲の軟骨膜からExt1を欠損させる事で,骨軟骨腫形成が誘導された.同所見は,MHEでの骨軟骨腫形成において,軟骨膜組織が重要である事を示唆する.
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