研究課題/領域番号 |
25462330
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤本 卓也 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00397811)
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研究分担者 |
市川 秀喜 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (00248105)
鈴木 実 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (00319724)
秋末 敏宏 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90379363)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / 明細胞肉腫 / 肺転移 / 動物モデル |
研究概要 |
明細胞肉腫は、若年成人の四肢に好発する稀な悪性腫瘍であり予後は悪い。治療は、手術による切除が基本であるが、化学療法、放射線療法は効果が無く、特に、再発や肺転移を来たした手術不能例では有効な治療方法が無い。ところが、近年、悪性黒色腫のホウ素中性子捕捉療法(BNCT)による良好な治療成績が報告された。BNCTは、それ自体では放射活性を持たないホウ素を腫瘍内に集積させ、続いて病巣部に生体障害性がきわめて低い熱中性子を生体外から照射し、ホウ素と中性子捕獲反応により生じた重荷電粒子で腫瘍を選択的に死滅させようとする治療方法である。明細胞肉腫も悪性黒色腫と同様にメラニンを産生するため、明細胞肉腫細胞株を四肢の皮下に移植した担癌動物モデルを用いてBNCTを施行したところ、同様に抗腫瘍効果が得られることが判明した。そこで、本研究ではさらに生命予後を大きく決定する肺転移についても、BNCTによる肺転移に対する抗腫瘍効果を検討することとした。平成25年度は、まずBNCT検討のための明細胞肉腫の肺転移動物モデルを開発した。肺転移動物モデルは、培養した明細胞肉腫細胞をマトリックスゲルに分散させ、それを、注射針を用いて左肺実質に直接腫瘍細胞を注入することで作成した。マイクロCTにより、肺転移巣の腫瘍形成を確認した後に、肺を摘出し組織検査にても肺実質内に単独で腫瘍が形成されることを確認した。また、BNCTでは、ホウ素製剤を投与した後の肺腫瘍部、正常肺、および正常臓器の経時的なホウ素濃度の計測値が、照射線量、照射時間を決定するのに非常に重要である。そこで、作成した動物モデルを用いて、ホウ素製剤投与後の各組織のホウ素濃度を計測し、腫瘍選択的なホウ素の集積を確認した。これらの結果は学術集会等で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
動物モデルの作成については、肺に限局した単発性の腫瘍を形成させることに成功した。また、その動物モデルを使用してホウ素製剤の体内動態を評価することが可能となり、形成した腫瘍細胞に選択的なホウ素の集積を確認した。 上記の結果により、肺転移動物モデルに対するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)による良好な抗腫瘍効果が期待できたため、肺転移動物モデルに対するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を施行した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、明細胞肉腫の肺転移動物モデルを用いてそのホウ素中性子捕捉療法(BNCT)による抗腫瘍効果を検討する。そして、得られた結果を詳細に検討し、実際の臨床現場への応用にはどのような条件が必要か解析し学会等にて報告する。 さらに、今回、新たに作成した単発性の肺転移モデルは、明細胞肉腫のみならず他の肉腫の場合の解析にも有用である。一般的に、一部の肉腫を除いて殆どの肉腫についても、明細胞肉腫と同様に手術による完全な切除以外に治療方法は無い。このような現状からホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、肉腫に対する新たな治療方法の一つとして大いに期待されている。そこで、可能であれば他の肉腫についても、明細胞肉腫へのホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の治療効果を比較・検討する目的にて研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
87,398円の次年度使用額が生じた。これは、動物モデルを作成した際の組織標本作成を外部業者に委託しなかったこと、および学会が、近隣で開催されたため交通費を要しなかった等の理由による。 次年度使用額については、海外発表の際の英文原稿の校閲費、および依頼原稿作成時の英文原稿の校閲費等に使用する。
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