研究課題
本プロジェクトでは、ロボット工学を応用した三次元力学試験機により未固定凍結人体標本を用いた距骨下関節の生体力学的特性を研究することが目的である。前年度まではこの三次元力学試験機を用いて、踵腓靭帯の関節制動について、背屈10度、0度、底屈15度、底屈30度におけるin situ forceとその貢献度を算出しえた。この研究は、首都大学東京のエンジニアと共同での作業となった。今年度は前年度までに得られた踵腓靭帯のデータを利用することで、靭帯損傷後や関節不安定症に対する靭帯再建術において、より生体に近い状態に近づけられるような方法の開発を検討した。人体足標本に対して踵腓靭帯再建術を行い、再建術前後でのキネマティクスや関節安定性を三次元力学試験器で計測した。さらに関節運動中に再建靭帯にかかる張力を測定する装置を開発し、その計測を行った。靭帯再建時には靭帯の初期固定張力を変えることで4条件設定した。その結果、生体における靭帯の張力に近い初期張力に設定した条件において、最も正常に近い足関節運動や安定性を得ることができた。現在行われている足関節外側靭帯再建術においては、再建靭帯の初期固定張力は様々である。初期固定張力は計測されておらず、再建靭帯に徒手最大張力をかけた固定が一般的である。このような場合、本研究の結果から靭帯再建後の足関節運動は正常と異なる状態におかれることが考えられた。本研究の結果は、足関節外側靭帯再建術の成績向上に直接つながる知見となり、靭帯損傷者の日常生活改善やスポーツ活動への貢献、将来的な変形性足関節症予防などにつながる意義を有すると考えられた。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Clinical Biomechanics
巻: 40 ページ: 8-13
http://dx.doi.org/10.1016/j.clinbiomech.2016.10.009