研究概要 |
PTH/PTHrP 受容体は軟骨細胞に存在しPTHは軟骨細胞に対して生理的な作用を有することが知られているが、PTHがMSCの軟骨分化にどのような影響を及ぼすか不明な点も残されている。本研究ではPTHと軟骨分化に関する先行研究の成果をふまえ、「PTHがMSCからの軟骨分化を促進する」という仮説のもとに研究を行う。今年度はMSCを軟骨分化誘導する場合、PTHの投与量に相関して軟骨分化が促進されるか調査した。 マウス骨髄由来MSCを用いてペレット培養法にて軟骨分化誘導した。軟骨分化誘導培地にPTHを0.1nM, 1nM, 10nM, 100nMそれぞれ投与し、3週間培養を行った。軟骨分化に対する作用について組織およびリアルタイムRT-PCRでCollagen type II α1(Co2a1)、Collagen type X α1 (Col10a1)、Collagen type I α1(Col1a1)、Sox9、Smad3、type 1 PTH/PTHrP receptor (PTH1R)のmRNA発現を評価した。 アルシアンブルー染色とII型コラーゲン免疫染色では低~中等度用量(1nM, 10nM)のPTH では対照と比較して強い染色性が確認されたが、高用量(100nM)では染色性は減弱した。mRNA発現を解析した結果、MSCの軟骨分化誘導は低~中等度用量のPTHにより促進される一方、高用量のPTHでは軟骨分化は抑制された。PTHによるMSCの軟骨分化に対する作用はPTH受容体の発現と相関し、転写因子Sox9の発現を介するものであるが、Smad3発現とは独立したものであることが推察された。 以上の結果より、低~中等度用量のPTHがMSCからの軟骨分化誘導を促進することが示された。
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