研究実績の概要 |
昨年度は、PTHを間欠投与する方法により、連続投与と比較して軟骨分化を促進することが示された。また、PTH間欠投与による軟骨分化促進効果はPTH受容体の発現増加を伴うことが確認された。しかしながら、PTH間欠投与後の効果出現までの時間経過については不明であった。この結果をふまえ、今年度はPTH間欠暴露直後の軟骨分化に対する反応ついて調査を行った。マウス骨髄由来MSCを用いてペレット培養法にて軟骨分化誘導した。PTHを含まない軟骨分化誘導培地でペレット培養を4日間行った後、PTH100nMを含む培地に1時間暴露し、0, 30, 60, 120分後の軟骨分化に関連するmRNAの発現を調査した。PTH暴露直後にPTH1Rの発現は減少するが、その後増加に転じた。Sox9の発現は暴露後60分で減少したが、その後増加に転じた。Collagen type I α1(Col1a1)の発現も同様にPTH暴露60分後に減少したが、その後増加に転じた。Col1a1の発現はPTH暴露により有意な変化はみられなかった。したがって、PTH1Rの反応に対してSox9およびCol2a1の反応が遅れて出現する結果となった。前年度までの結果では低~中等度用量のPTHがMSCからの軟骨分化誘導を促進し、高用量では逆に抑制される結果が得られていた。投与方法を持続的から間欠的に変えることで、高用量でも軟骨分化を促進させることが示された。すなわち、間欠的な高濃度PTH暴露により、PTH/PTHrP受容体シグナルが一時的に抑制された後に回復し、発現が増加して軟骨分化誘導シグナル発現を促進した可能性が示唆された。
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