本研究の目的は、骨髄・血液由来および腱板由来間葉系細胞を容易に追跡可能なGFP骨髄キメララットの肩腱板修復モデルを用いて、肩腱-骨接合部に骨髄由来細胞を誘導し、腱-骨接合部での骨髄由来細胞の動態および分化過程を明らかにすることである。 平成25年度は、はじめにGFPラットを用いた腱-骨接合部の正常構造の組織学的検証を行った。次にSDラットを用いて、肩腱板修復モデルを作製した。術式は棘上筋腱を大結節付着部から尖刃で鋭利に切除し、Mason-Allen法に準じて解剖学的な付着部に再縫着する方法であり、その手術手技を獲得した。肩腱板修復モデルが確立したSDラットの肩を用いて、腱板修復のみ行った群、上腕骨大結節に穿孔を加えた群および上腕骨大結節に軟骨掻爬を加えた群の3群を作成し、腱板修復後4週の腱-骨接合部についてHE染色で組織学的評価を行った。上腕骨に穿孔を加えた群では他の群と比較して腱-骨接合部で線維芽細胞と軟骨様細胞が増加していることを確認した。続いて、GFP骨髄キメララットモデルの作製手技に関しては現在も習得中であるが、予備実験としてGFP骨髄キメラモデルとして確立したラットを用いて、肩腱板修復を行った(N=2-3)。SDラットの際と同様に3群を作成し、腱板修復後2、4、8週で腱-骨接合部をHEおよびサフラニンO染色により組織学的に評価した。腱板修復後4、8週において、上腕骨に穿孔を加えた群では他の群と比較し、腱-骨接合部においてGFP陽性細胞および軟骨細胞が増加していることを確認した。このことは、腱-骨接合部において、骨髄由来細胞が腱板修復術後の腱-骨接合部の修復に関与している可能性を示している。今後、N数を増やし、さらに詳細な組織学的検討を予定している。
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