研究課題/領域番号 |
25462351
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
村田 景一 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10382318)
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研究分担者 |
赤羽 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40326327)
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
清水 隆昌 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (70464667)
面川 庄平 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70597103)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医療 / 間葉系幹細胞 / βTCP / 血管 / 骨新生 / 血管誘導 |
研究概要 |
培養骨髄由来間葉系幹細胞(MSCs)から作製した高い骨形成能と血管誘導能を有する骨芽細胞シートを用いた血管柄付き人工骨(vascularized tissue-engineered bone:VTEB)を作成し、その骨新生・血管誘導能を経時的に評価した。11週齢Fischer344ラットの大腿動静脈を挙上し、径6mm、長さ10mm、気孔率75%のβTCP(Superpore: PENTAX社)に組み合わせた。人工骨に血管束のみ組み合わせた群をcontrol群、細胞浮遊液搭載型人工骨に血管束を組み合わせた群をcell群、人工骨と血管束の間に骨芽細胞シートを充填したものをsheet群とした(各群n=16)。術後2、4週でサンプルを摘出し、組織像および、real time PCRでALP、OC、VEGF-AのmRNA発現量を測定し比較検討を行った。組織像では、移植後2週においてcontrol群およびcell群で骨形成は認めず、sheet群で血管束周囲に骨形成を認めた。移植後4週においてcontrol群およびcell群で人工骨内にわずかな新生血管を認めたが、sheet群では血管束から人工骨内へ放射状に旺盛な骨形成および新生血管を認めた。術後2週のmRNA発現量はALP、OCは cell群、sheet群ともにcontrol群と比較し高値を示した(p<0.001)が、VEGF-Aはcell群がcontrol群およびsheet群よりも高値を示した(p<0.01)。術後4週のmRNA発現量は全項目でsheet群がcontrol群およびcell群より高値を示した(p<0.001) 。細胞浮遊液を搭載した人工骨と比較し、骨芽細胞シートを人工骨と組み合わせることで血管束周囲に旺盛な血管新生と骨形成が認められ、VTEB作製における骨芽細胞シートの有用性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は血管付き骨芽細胞シート付加人工骨モデル(sheet群)の作製および人工骨に血管束のみ組み合わせた群(control群)、細胞浮遊液搭載型人工骨に血管束を組み合わせた群(cell群)との骨新生・血管誘導能を経時的に比較評価した。結果としてsheet群が他群に比べて有意に骨新性・血管誘導能が高いことが証明できた。さらに骨芽細胞シート付加血管付き人工骨モデルを作成し4週間経過した後に血管茎の末梢側を結紮・切離して、有茎血管付き人工骨モデルとして異所性に腹部皮下に移植するモデルを作製した。さらに人工骨に骨芽細胞シートのみを搭載して血管茎を移植しなかったモデルを作成し4週間経過した後に異所性に腹部皮下に移植し、2群間で骨・血管新生能を比較評価するpilot studyを行い、当実験が実現可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
【血管付き骨芽細胞シート付加人工骨モデルの作成】 11週齢F344ラットの大腿動静脈を手術用顕微鏡下に挙上し、これらの血管束を円柱状βTCP(直径6mm、厚み10mm、気孔率75%:PENTAX社製SUPERPORE)に作製した幅2mmの側溝に通す。血管束と人工骨の間に骨芽細胞シートを充填した骨芽細胞シート群(n=14)、人工骨の溝に骨芽細胞シートを充填するだけのシート単独群(n=14)の2群を作製する。移植4週後に移植人工骨を周囲組織から剥離し、血管束の末梢側を結紮切離して有茎血管柄付き人工骨モデルとして挙上し、異所性に腹部皮下に移植する。これらの2群間の骨・血管新生能を比較評価する。 【大腿骨偽関節部への血管付き人工骨移植】 有茎血管付き人工骨挙上時に同側大腿骨に準備した偽関節部にそれらを移植し髄内釘固定する。偽関節モデルは大腿骨骨折を作成し髄内と外骨膜を掻爬切除、髄内釘でルーズに固定する事で作成する。コントロール群として偽関節部に人工骨のみを移植する群(n=14)を追加し前述の2群と合わせて合計3群について経時的(移植後4週、8週)に骨癒合をX線写真にて評価する。また移植後4週、8週で骨移植部の組織標本を摘出し、組織像、アルカリホスファターゼ(ALP)、オステオカルシン(OC)、血管内皮増殖因子(VEGF)のmRNA量(リアルタイムPCR)を測定し、血管・骨形成能の評価を行う。さらに力学評価は8週で採取した大腿骨をマイクロCTにて撮影した上で有限要素法にて行う(ラトックシステムエンジニアリング株式会社に依頼)。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は主にラット血管付き骨芽細胞シート付加人工骨モデルの骨新生・血管誘導能を経時的に評価した。また作成した血管付き骨芽細胞シート付加人工骨モデルを有茎血管付き人工骨移植として異所性にラット腹部皮下に移植する実験に関してpilot studyを行い、当実験が実現可能であることを確認した。血管付きラット大腿骨に作製した偽関節部に血管付き骨芽細胞シート付加人工骨を移植する実験に関しては今後次年度以降に実施する予定である。これに伴い使用した実験用ラット数量、試薬、検査諸費用が予定より減少したため、受領額と支出額に差異が生じた。 26年度はラット血管付き骨芽細胞シート付加人工骨モデルを有茎血管付き人工骨移植として異所性に腹部皮下に移植する実験を遂行する予定である。さらに人工骨に骨芽細胞シートのみを搭載して血管茎を移植しなかったモデルとの2群間で骨・血管新生能を比較評価する予定である。その後これらの結果を検討したうえ、次年度以降に大腿骨に作製した偽関節部に血管付き骨芽細胞シート付加人工骨を移植する実験を遂行し、ラット血管付き骨芽細胞シート付加人工骨モデルが異所性に血管・骨新生能を有し、偽関節部においても骨癒合が得られることを証明する予定である。その際に本年度生じた次年度使用額を使用する予定である。
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