研究実績の概要 |
2015年度に解析した転写因子EMX1, EMX2について作成したアデノウィルスベクターをヒトMSCに強制発現させる系で解析を行った。2つの転写因子のうちEMX2にはエクソン2 の選択的スプライシングによるshort/longの2種類のアイソフォームが存在する。リアルタイプRT-PCRや細胞染色法による機能評価からEMX1よりEMX2の方が軟骨分化誘導能が高いこと、EMX2のうちshort isoformはより初期の、long isoformは後期の軟骨分化を誘導することが明らかになり、EMX2の選択的splicing が軟骨分化進行のスイッチとして働いている可能性が示唆された。TAp63betaとの協調作用をヒトMSCで確認したところALP染色、Col-IIの免疫染色でEMX2のlong isoform との協調作用が確認された。以上の結果からp63やEMX2などのスプライシング制御が軟骨分化に大きな影響を与えることが想定されたためESE結合分子であるSRSFファミリー分子の発現ベクターを作成し軟骨分化に与える影響を検証した。プロモーターレポーターアッセイによるスクリーニングの結果SRSF5がSOX6やCOL2A1の転写活性を上昇させるという結果が得られた。ヒトMSCにおける軟骨分化モデルとしては、実際に臨床現場で広く利用されているクリオプレシピテート(以下クリオ)に着目した。クリオを作用させたMSCで実際にCOL2A1, SOX6などの軟骨分化マーカーの誘導やalcian blue 染色で示される軟骨基質産生やALP染色で示される軟骨分化を確認できた他、細胞増殖能も上昇していた。一方でPRPやクリオプレシピテートそのものによる軟骨分化の程度は条件検討後も限定的で、SDS-PAGEや2次元電気泳動では特異的なバンドまたはスポットを確認することはできなかった。
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