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ヒト間葉系幹細胞による再生医療を実現するためには、臨床的に実用的な「品質保証」の指標が必要とされる。本研究は、ヒト膝関節周囲の様々な組織に由来する間葉系幹細胞の遺伝子発現プロファイルを比較解析することによって、間葉系幹細胞が潜在した元組織の修復に寄与するための相応しい性質を保有するという仮説を検証するとともに、再生医療に利用される間葉系幹細胞の再生能力を反映する細胞機能評価を可能とする「品質評価基準」の確立を目指した。
初年度には、まずマウス骨髄および滑膜由来の間質前駆細胞の網羅的な遺伝子発現の比較解析を行い、ヒト骨髄および滑膜に由来する間葉系幹細胞における比較解析との共通性を検証することによって、骨髄および滑膜に由来する前駆細胞の遺伝子発現様式に、種を超えた共通性が潜在することを明らかにした。
このような共通性を示す遺伝子発現を示した遺伝子群の特徴として、（１）「軟骨細胞への分化潜在性」を反映する、軟骨基質構成分子の遺伝子と転写因子群、（２）発生過程における軟骨細胞の分化および増殖制御に重要とされる「ヘッジホックシグナルの伝達制御」に関わる分子群、（３）同様に骨軟骨および関節発生に重要とされる「Ｗｎｔシグナル制御」に関わる分子群の多数について、ヒトおよびマウスの複数の検体において再現性が証明された。
最終年度においては、これらの分子群の発現レベルが、個々の間質前駆細胞の軟骨細胞分化能に、実際に反映されるか否かについて検討した。またこれらの結果を統合して、軟骨細胞への分化能を反映する、軟骨再生医療に望ましい間葉系幹細胞の「品質評価」に利用可能な分子指標の確立を目指した。検討した指標の有効性の判定については、今後の検討がさらに必要であることが明らかとされた。
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