研究課題/領域番号 |
25462363
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
遠藤 直人 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10251810)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腿骨近位部骨折 / 経年的推移 / 骨粗鬆症 / 脆弱性骨折 / 健康寿命 / 寝たきり |
研究概要 |
大腿骨近位部骨折の転帰は不良で寝たきりの要因ともなることから健康寿命延伸をめざすためには大腿骨近位部骨折の転帰とその関連因子の解析が重要である。まず骨折発生数と経年的推移についての実態調査を行った。 新潟県(佐渡市)における2010年の大腿骨近位部骨折受傷者について調査し、2004年以来の経年的推移を検討した。2010年新潟県全県(人口約240万人)の大腿骨近部骨折発生数は3218であり、1985年に比して5倍の増加であった。75歳以上でその頻度は加齢とともに増加することが示され、その増加率についても経年的により高いものであった。また新潟県内でも最も高齢化の進んでいる地域である新潟県内佐渡市(人口6.3万人、高齢化率37%)での大腿骨近位部骨折については2010年112骨折であった。以前行った2004、2005、2006年の調査結果と比較した結果、2004年からの経年的推移では横ばいであり、増加はみられなかった。受傷場所では屋外が60%以上であり、転倒による例がほとんどであった。骨粗鬆症治療は10%程度であった。 この結果は高齢者脆弱性骨折である大腿骨近位部骨折は新潟県全県の調査では経年的増加がみられたものの、新潟県内の高齢化率の高い地域である佐渡市では経年的増加はみられなかったことは大腿骨近位部骨折の経年的推移には地域差があることを示唆しており、その要因についての解析が今後の課題である。 骨粗鬆症を基盤とする脆弱性例についてその要因の解析をおこなっている。骨折症例から骨組織を生検し、骨組織の解析を開始した。さらに骨折症例の転帰についての調査を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新潟県(佐渡市)における2010年の大腿骨近位部骨折受傷者について調査し、2004年以来の経年的推移を検討し、1985年に比して5倍の増加であったこと、および新潟県内佐渡市(人口6.3万人、高齢化率37%)での経年的推移では横ばいであり、増加はみられなかったことを明らかにした。さらに骨粗鬆症を基盤とする脆弱性例についてその要因の解析として骨折症例から骨組織を生検し、骨組織の解析を開始し、さらに骨折症例の転帰についての調査を開始したことから当初の目的を目指して遂行している。以上より概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
大腿骨近位部骨折の転帰は不良で寝たきりの要因ともなることから健康寿命延伸をめざすためには大腿骨近位部骨折の転帰とその関連因子の解析が重要と考え、骨折発生数と経年的推移についての実態調査を行った。その結果は高齢者脆弱性骨折である大腿骨近位部骨折は新潟県全県の調査では経年的増加がみられたものの、新潟県内の高齢化率の高い地域である佐渡市では経年的増加はみられず、大腿骨近位部骨折の経年的推移には地域差があることが示唆された。平成26年度にはその要因についての解析を進める。骨粗鬆症を基盤とする脆弱性骨折症例から骨組織を生検し、骨組織の解析を進める。さらに骨折症例の転帰についての調査を進める。骨折症例の自立度、歩行能力、骨粗鬆症の薬剤治療率等についての調査解析を進める。 2015年大腿骨近位部骨折を行うにあたり、その準備をおこなう。集積するデータ:性別、年齢、受傷機転、生活環境、合併症、併存疾患:糖尿病など。歩行能力:自力歩行、杖歩行、車椅子、寝たきりなどのレベル別での判定。 骨粗鬆症治療薬の使用の有無:種類、認知機能:介護保険における判定基準に基づく判定、過去の骨折歴:脊椎骨折、反対側の大腿骨近位部骨折およびその時期等の調査項目の検討と調査員の訓練と調査対象病院、施設への周知をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度において上記計画に沿って調査、研究を遂行していたものの、骨折危険因子や骨折組織解析をおこなう骨折症例数が予想よりも少なく、結果として支出が当初の計画を下回った。平成26年度には解析症例数の増加が見込まれ、さらに平成27年の調査事業の準備も新たにはじまることから平成26年度に使用する予定である。 大腿骨近位部骨折症例について脆弱性骨折を来す要因を解析する。骨折症例について骨折危険因子について問診、既往歴を調査、さらに血液尿検査、ビタミンD(25OHD)を測定する。加えて骨折治療時に骨組織を採取生検し、解析する。骨組織の採取、骨組織標本の作製と顕微鏡下で解析をおこなう。 平成27年(2015年)の骨折調査の準備をおこなう。検討済の調査項目について再検討をおこない、調査票およびデジタルによるデータ集積方法の検討をおこなう。さらに骨折症例を扱う対象病院への説明とデータ集積の依頼をおこなう。以上について支出を行う計画である。
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