研究課題
高齢者の大腿骨近位部骨折は骨粗鬆症に起因する骨脆弱によるもので、ADL,QOLが障害され、重篤では寝たきりにいたる。まさに健康寿命の阻害要因である。したがって超高齢社会の日本において健康寿命延伸のためには大腿骨近位部骨折の経年的推移と骨折危険因子を解析し、その対策を立てることが重要である。我々は新潟県(佐渡市を含む)における2010年の大腿骨近位部骨折を調査し、2004年以来の経年的推移を報告した。その結果によれば2010年新潟県全県(人口約240万人)の大腿骨近部骨折発生数は3218であり、1985年に比して5倍の増加であった。年齢別骨折発生率では75歳以上で増加することを示した。新潟県内でも最高齢化の進んでいる地域である新潟県内佐渡市(人口6.3万人、高齢化率37%)での大腿骨近位部骨折数については2010年112骨折であった。以前行った2004、2005、2006年の調査結果と比較した結果、2004年からの経年的推移では横ばいであり、増加はみられなかった。この結果は高齢者脆弱性骨折である大腿骨近位部骨折は新潟県全県の経年的調査では増加していたものの、新潟県内の高齢化率の高い地域である佐渡市では経年的には横ばい状態であることが示され、地域差があることが示唆された。以上の背景の下、2015年の1年間で発生した大腿骨近位部骨折の調査をおこない、その総数は3,000例以上であった。2010年のそれに比して骨折者の高齢化がみられたものの、骨折総数では増加は軽微であった。加えて骨粗鬆症を基盤とする脆弱性例についてその要因の解析をおこなう目的で骨折症例から骨組織を生検し、解析した。骨代謝回転はさまざまであり、一定の傾向はないもののマイクロクラックの蓄積が著明であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
1)2015年新潟県内発生の大腿骨近位部骨折調査が完了2015年1月1日から12月31日までに発生した大腿骨近位部骨折について、新潟県全県を対象とした大腿骨近位部骨折調査を完了した。新潟県内の病院、関連施設との協力で発生した骨折についての調査項目に従っての調査であった。1985年以降の経年的推移、特に2010年との比較をおこなった。その結果、2010年に比して骨折総数の増加は軽微であったことを明らかにした。2)骨組織の解析骨粗鬆症を基盤とする脆弱性例についてその要因の解析として骨折症例から骨組織を生検し、骨組織の解析を進めた。骨折患者さんの骨折手術時に骨折部の組織および腸骨から骨組織を採取し、その結果を骨形態計測の手法で解析を進めている。特に非定型大腿骨骨折症例での解析を進めた。その結果、骨代謝回転についてはさまざまであることが明らかとなった。以上のように当初の目的を目指して遂行し、概ね順調と判断できる。
大腿骨近位部骨折の転帰は不良で寝たきりの要因ともなることから健康寿命延伸をめざすためには大腿骨近位部骨折の転帰とその関連因子の解析が重要と考え、骨折発生数と経年的推移についての実態調査を行った。2015年1年間の新潟県全県における高齢者脆弱性骨折:大腿骨近位部骨折は2010年に比して骨折者の高齢化がみられたものの、骨折総数の増加は軽微であった。今後はこの調査結果を詳細に解析し、骨折患者の特徴、骨折要因、骨粗鬆症の治療歴などを調査解析する。さらに骨粗鬆症を基盤とする脆弱性骨折症例から骨組織を生検し、骨組織の解析を継続して進める。骨折者で同意を得てさらに骨組織の採取・検討を進める。
2015年1年間の新潟県全県における高齢者脆弱性骨折:大腿骨近位部骨折の調査をおこなった。骨折者の対象が2015年1月1日から12月31日までの骨折発生者であり、そのデータ収集と解析に時間を要した。さらに骨粗鬆症を基盤とする脆弱性骨折症例から骨組織を生検し、骨組織の解析を継続して進めた。この骨組織切片の作成および骨形態計測法による解析には数か月間を要したことから次年度使用額が生じた。
次年度には収集した骨折者のデータ解析および骨折者から得られた骨組織標本の作製と骨形態計測法による計測と解析・検討を進める計画である。
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