研究課題/領域番号 |
25462366
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 伸典 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20570196)
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研究分担者 |
小嶋 俊久 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (70378032)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 関節軟骨変性 |
研究概要 |
主要なヒアルロン酸(HA)レセプターであるCD44の機能性は、関節軟骨の恒常性維持に極めて重要である。CD44は酵素的断片化によりレセプターとしての機能を喪失し細胞内断片(ICD)を生ずる。CD44の断片化はCell-HA結合の喪失につながり、予想されるICDの転写因子としての機能と共に、軟骨細胞の脱分化に関わっている可能性があると考えて検討を進めている。本研究では、関節軟骨細胞の脱分化におけるCD44断片化の意義とICD自体の機能解析を行い、断片化抑制による脱分化制御、更には変形性関節症発生抑制の可能性を探っている。同時に遺伝学的に均一であるcell lineにおけるCD44の断片化モデルを確立することは、当研究を進めるにあたり重要である。 そこで我々は第一に、HCS細胞(ヒト軟骨細胞様細胞株)において検討を進めている。CD44の断片化阻害はMMP阻害剤の使用やCD44のLipid raftへの移行を阻害することで可能であるが、特に本年度は既に臨床で使用されているHMG-CoA還元酵素素材薬であるSimvastatinを用いた断片化阻害効果を中心に検討した。IL-1β刺激によるCD44断片化はSimvastatinにより効果的に阻害された。またこの阻害効果はコレステロール生成阻害のみならず、RasやRac/Rhoシグナル阻害が関与していることを確認した。siRNAによるRNA干渉実験系において、ADAM10がCD44断片化に関わる主要なMMPであることが確認された。更にはメカニカルストレスによる軟骨変性状態を再現すべく、ST140(STREX社)を用いて周期的進展負荷によりCD44の断片化が確認されたことから、変形性関節症発生との関わりが示唆された。またCD44とLipid raftの共局在の確認、各種刺激による局在変化などを視覚的、分子生物学的に明らかにするべく、凍結割断レプリカ標識法、ショ糖密度勾配遠心法による検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SimvastatinによるCD44の断片化抑制効果については、既に再現性をもって示すことが出来た。メカニカルストレスによりCD44断片化が引き起こされることから、変形性関節症における軟骨変性の最初のきっかけになり得ることが示された。Simvastatin添加はCD44断片化抑制だけでなく、関節軟骨細胞の脱分化をも抑制することから、初期の変形性関節症においては、Simvastatinの使用により病態進行に抑制的影響を加えることが出来る可能性が示されつつあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Cell lineではSimvastatinによるCD44断片化抑制を示すことが出来たので、以後関節軟骨細胞初代培養系で同様の結果を確認する。メカニカルストレスによるCD44断片化とその抑制効果も引き続き明らかにしていく。またCD44とLipid raftの共局在の確認、各種刺激による局在変化などを視覚的、分子生物学的に明らかにするべく、凍結割断レプリカ標識法、ショ糖密度勾配遠心法による検討を継続して行う。 平行して、ex-vivoの実験系としてヒト正常関節軟骨組織片でのCD44断片化と抑制効果を検討する。正常軟骨組織、変形性関節症軟骨組織からCD44を抽出して断片化を検討する。メカニカルストレスによるCD44断片化導入を確認し、Simvastatinによる抑制効果が軟骨組織においても再現されることを明らかにする。
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