研究課題/領域番号 |
25462367
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
長谷川 正裕 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (40308664)
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研究分担者 |
須藤 啓広 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60196904)
吉田 利通 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80166959)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 関節軟骨 |
研究概要 |
テネイシンC(TNC)の担体として硫酸化ジェラン固定化ジェランを用いた徐放実験を行った。硫酸化ジェラン固定化ジェランにTNCを含浸させ、PBS入りのチューブに入れ、TNC濃度をELISAキットを用いて測定した。コントロールとして、担体として汎用されているコラーゲンスポンジを用いて比較したところ、硫酸化ジェラン固定化ジェランが有意に徐放能に優れていた。 TNCの関節軟骨欠損修復効果を検討した。大腿骨関節面に大きさ4mm径で、深さ3mmの軟骨下骨を貫く骨軟骨欠損を作製した。担体として硫酸化ジェラン固定化ジェランスポンジを用い、TNC濃度は10μg/ml、100μg/mlとした。コントロールとして、TNCを含浸させず、生食を含浸させたものを作製し、術後4~12週で屠殺し膝関節部を採取した。肉眼的、組織学的に評価し、軟骨修復の定量評価はmodified WAKITANI scoreを用いた。その結果、4週では各群で欠損部は不透明な組織で満たされ軟骨様修復を認めなかった。8週ではTNC 10 μg/ml投与群において欠損部は光沢のある軟骨様組織で覆われた。TNC 100 μg/ml投与群と生食群においては欠損部の辺縁がわずかに縮小を認めたのみであった。12週ではTNC 100 μg/ml投与群とTNC 10 μg/ml投与群において欠損部は軟骨様組織で覆われたが、生食群では欠損部は不透明な組織で満たされ軟骨修復を認めなかった。modified WAKITANI scoreは、4週において各群間に有意な差を認めなかった。8週において、TNC 10 μg/ml投与群はTNC 100 μg/ml投与群、生食群より有意に良好な結果であった。12週においても、TNC 10 μg/ml投与群はTNC 100 μg/ml投与群、生食群より有意に良好な結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家兎において、TNCの関節軟骨修復作用はTNC 10 μg/ml投与群、TNC 100 μg/ml投与群ともに示された。TNC 10 μg/ml投与群のほうがより優れていた。しかし、12週以降における修復の評価ができていないこと、免疫組織学的検討、生体力学的検討が行えていないことに問題がある。TNCの至適投与濃度、投与期間を決定するために、さらなる研究が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
TNCがin vivoの家兎の実験で軟骨修復に有用であることが示されたが、関節内に投与したTNCがどのようなメカニズムで修復に役立っているかの検討を推進する必要がある。関節軟骨細胞にTNCを添加し、in vitroでTNCの増殖促進とプロテオグリカン量の増加を起こすシグナル(特にTNCレセプタや増殖因子)について検討する。さらに、主要なアグリカン分解酵素であるA Disintegrin and Metalloproteinase with Thrombospondin Motifs (ADAMTS)-4とADAMTS-5がTissue Inhibitor of Matrix Metalloproteinase (TIMP)-3を介して、TNCによって抑制されるかどうかを検討する。培養軟骨細胞のTNC添加の有無による遺伝子発現の変化を網羅的に解析したい。 損傷された関節軟骨の修復だけでなく、関節軟骨変性の抑制効果がTNCにあるかどうかもマウスを用いたin vivoの実験で検討する。膝の前十字靱帯、内側側副靱帯を切離し、不安定性による変形性膝関節症モデルを作製する。関節内にTNCを投与することにより、軟骨変性が抑制されるような投与量、投与時期を検討する。
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