研究課題/領域番号 |
25462379
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
荒木 靖人 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (10580839)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 変形性関節症 / MMP分子 / ヒストン修飾 / 関節炎 / エピゲノム |
研究概要 |
関節リウマチ(RA)において、関節炎における軟骨破壊の原因分子の一つであるMatrix metalloproteinase(MMP)ファミリーに焦点を当て、エピゲノム異常の存在を明らかにする事が本研究の目的である。 MMP分子はMMP1からMMP28まで存在し、コラーゲンやゼラチンなどの軟骨に多く含まれる基質を分解する酵素である。これらは、RAにおいて軟骨破壊の主役の一つとなっている。RA滑膜細胞においてMMP遺伝子発現を調べたところ、MMP1、3、9、13遺伝子発現が亢進していた。さらに、MMP遺伝子転写の活性化機序の解明を行うべく、ヒストン修飾に着目して検討したところ、ヒストン活性化マーカーであるヒストンメチル化(H3K4me3)が、転写の亢進しているMMP遺伝子で上昇していた。H3K4me3の上昇によりMMP遺伝子発現が亢進しているかを検証するため、ヒストンがメチル化される時に転写共役因子として働くWDR5発現を抑制する実験を行った。その結果、RA滑膜細胞においてH3K4me3が低下し、それに伴いMMP1、3、9、13遺伝子発現が減少した。 以上のように、MMP遺伝子転写の活性化機序に着目して、関節炎を来す疾患特異的な軟骨破壊の機序の解明を進めている所である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画していた関節炎疾患特異的なMatrix metalloproteinase(MMP)遺伝子発現亢進の機序の解明は予定通り進行中である。MMP遺伝子発現亢進におけるヒストンメチル化の関与に関する研究は、WDR5ノックダウン実験により遂行された。その結果によると、関節リウマチ(RA)滑膜細胞においてWDR5遺伝子発現抑制によりMMP1、3、9、13遺伝子発現は減少した。これにより、これらのMMP遺伝子においてヒストンメチル化が遺伝子発現の制御の一端を担っている事が明らかとなった。また、ヒストンメチル基転移酵素(HMT)によるMMP遺伝子転写活性化の解明に関する研究も、順次進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果により、関節リウマチ(RA)滑膜細胞におけるMatrix metalloproteinase(MMP)遺伝子転写の活性化機序としてH3K4me3の亢進が明らかになったが、ヒストンメチル化の異常を制御する機序を今後明らかにする。RA滑膜細胞においてヒストンメチル基転移酵素(HMT)の発現に異常がないかを検討した。未刺激状態では、RAと陰性対照の変形性関節症(OA)においてHMT遺伝子発現に差は認められなかったが、炎症性サイトカインTNFαで細胞を刺激したところ、12個のHMT(PRDM2など)において、RAにおける遺伝子発現亢進が見られた。PRDM2をsiRNA法によりノックダウンしたところ、MMP13、IL-6、IL-8遺伝子などにおいて発現の低下が見られた。現在、MMP遺伝子においてヒストンメチル化を変動させるHMTの同定を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に計画していた関節炎疾患特異的なMatrix metalloproteinase(MMP)遺伝子発現亢進の機序の解明において、MMP遺伝子発現亢進におけるヒストンメチル化の関与に関する研究は予定通り遂行され、それに相当する研究費を使用した。次に予定していたヒストンメチル基転移酵素(HMT)によるMMP遺伝子転写活性化の解明に関する研究が現在進行中であるため、それに相当する研究費を次年度に使用する。 これまでの研究成果により、関節リウマチ(RA)滑膜細胞におけるMatrix metalloproteinase(MMP)遺伝子転写の活性化機序としてH3K4me3の亢進が明らかになった。さらに、RA滑膜細胞において12個のヒストンメチル基転移酵素(HMT)の発現の亢進を見出した。現在、MMP遺伝子においてヒストンメチル化を変動させるHMTの同定を進めている。この研究は平成26年度の前半に終了予定である。
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