研究課題
ロコモティブ症候群(ロコモ)とメタボリック症候群(メタボ)のクロストークの重要性は、糖尿病患者の骨の脆弱性が指摘されていることからも明白である。研究代表者らはこれまで、糖代謝を調節を司る膵ホルモンを分泌する膵内分泌細胞の分化に必要とされる転写因子Pax6が骨破壊の原因となる破骨細胞分化を調節することを見出した(2013 JBC)。Pax6は破骨細胞のマスター因子NFATc1を介するTRAP遺伝子の発現を抑制するのみならず、マウス大腿骨遠位部の破骨細胞が存在する成長板周辺に内在性Pax6が存在することより、組織的な局在の違いを利用してPax6を介する糖代謝と骨代謝を調節するクロストークの存在が示唆された。一方、骨代謝の恒常性の維持には、破骨細胞と協調して骨形成を制御する骨芽細胞の存在が不可欠である。本研究において、近年注目されているエピジェネティクス制御に関わるDNAメチル化修飾が、BMP4刺激によって誘導される骨芽細胞分化に寄与することを見出した。DNAマイクロアレイ解析の結果、細胞周期を調節するKif11の発現がBMP4刺激によりDNAメチル化の標的となり発現が低下する可能性が示唆された。さらにKif11を過剰発現させた結果、骨芽細胞の分化が阻害されることが示された。この他、アルツハイマー治療薬donepezilが破骨細胞分化を抑制すること(2015 Heliyon)、糖代謝と骨代謝を調節する神経ホルモン受容体CRFR1の活性化が炎症によるアポトーシスから膵β細胞の保護作用に寄与すること(2014 J.Mol.Endocrinol.)や新たなリプログラミング機構の存在を見出した。以上より、転写因子ネットワークやエピジェネティクス制御を介して骨粗鬆症などの骨代謝疾患(ロコモ)や糖尿病などの糖代謝疾患(メタボ)の両側面を調節できる新たな治療戦略の基盤となることが期待される。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Frontiers in Endocrinol.
巻: 6 ページ: 6
10.3389/fendo.2015.00006
Heliyon
巻: 1 ページ: e00013
10.1016/j.heliyon.2015.e00013