骨は運動・支持器官としての強度と血中カルシウム濃度の恒常性を保つため、生涯にわたり形成と破壊を繰り返している。骨の形成は骨芽細胞、骨吸収は破骨細胞が担っており、形成と破壊の巧妙なバランスによって骨組織の恒常性が維持されている。近年の高齢化社会の進展に伴い、高齢者の生活の質の向上と維持の面からも骨疾患に代表される運動機器疾患の制御と克服が社会的にも求められている。骨粗鬆症や関節リウマチ、変形性関節症等、正常な骨代謝の破綻を起因とする疾患は患者数が非常に多いにも関わらず、そのメカニズムの解明や創薬研究についてはあまり進んでないのが現状である。本申請者は世界で初めてRNAヘリカーゼp68の全身性欠損マウスの作製に成功し、その解析から p68特定のマイクロRNA(miRNA)群のプロセッシングに重要な因子であることを証明した。一方、最近の研究の進展により、miRNAが骨代謝調節にも関係していることが明らかとなりつつある。これらのことからp68欠損マウスを用いて骨組織におけるmiRNAの機能解明を行うことにした。 これまでの研究成果により、全身性p68欠損マウスは胚性致死であることが明らかとなっている。このため、p68floxマウスを新たに樹立し、骨組織特異的p68欠損マウスの作出を試みた。骨組織に存在する細胞の一種である骨細胞特異的Cre発現マウスであるDMP-1 Creマウスとfloxマウスを交配し、骨細胞特異的p68欠損マウスの作出に成功した。また、骨代謝は神経系によっても制御されることから、神経特異的Cre発現マウスであるSynapsin I Creマウスとの交配を行い神経特異的p68の作出も試みた。また我々は、骨芽細胞分化に伴い発現が上昇するmiRNAを新たに同定した。そこで、骨芽細胞分化に対する新規 miRNAの影響を検討したところ、骨芽細胞分化を制御していることを見出した。
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