骨組織は生涯を通して形成と吸収が行われ、そのバランスを保つことで骨量が維持される。骨吸収を担う破骨細胞(OC)はマクロファージ由来の細胞である。骨形成を担う骨芽細胞(OB)に、骨吸収促進因子が作用するとOC分化因子RANKLが発現する。マクロファージには受容体RANKが発現しており、OB膜上のRANKLを認識することで、OCへと分化する。一方、OBはOC分化抑制因子であるオステオプロテゲリン(OPG)も発現し、骨量維持の恒常性を保っている。本申請者は、受容体型チロシンキナーゼRor2によって活性化されるWnt非古典経路がRANKLにより誘導される破骨細胞分化を促進することを発見した。さらに、それを阻害することで新規骨代謝改善薬の可能性を報告してきた。今回、Wnt非古典経路を阻害する目的でRor2に対する中和抗体の作製を試みた。 Ror2を過剰発現するCHO細胞を大量に培養しタンパク質を回収し、抗体作製を試みたが計画通りにいかなかった。このため、方針を転換しWnt非古典経路を阻害する低分子化合物の検索を行った。マウス骨髄マクロファージに、M-CSFとRANKLで誘導する破骨細胞培養系へ、Wnt5aを添加すると破骨細胞分化が促進する。本培養系にWnt非古典経路を阻害する可能性のある低分子化合物を各種添加した。その結果、ある転写因子を阻害する化合物AはWnt5aが促進する破骨細胞分化を仮説通り抑制した。しかし、意外なことに、同じ分子を阻害する化合物Bは、破骨細胞分化を促進した。本年度は、なぜこのような違いが生じたのかを明らかにしようと試みたが、その原因を特定するまで至らなかった。現在、もう一度立ち戻り、その分子が破骨細胞分化に必要かどうかRNA干渉法などを用い検討することを考えている。
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