研究課題
これまで、慢性ならびに急性炎症・疼痛モデルラットでの下垂体後葉系におけるオキシトシン(OXT)産生・分泌の亢進が起こり、視床下部-脊髄系におけるOXT系が活性化することを示してきた。平成27年度は、これらのモデルにおける活性化したOXTの役割を検討するために、OXT受容体のアポトーシスを引き起こすtarget toxinであるサポリン(SAP)を使用し、脊髄ならびに脳内でのOXTの役割について検討した。方法としては、慢性および急性炎症・疼痛モデルを作製し、モデルラットの髄腔および第4脳室内に、Blank-SAPもしくはOXT-SAPを投与した。慢性炎症・疼痛モデルは、これまでの実験と同様、アジュバント関節炎ラットを使用した。OXT-SAPもしくはBlank-SAP投与3週間後のラットに対し、結核死菌を接種し、各日でarthritis index・体重・食餌量・飲水量・尿量の変化について代謝ゲージを用いて計測した。急性炎症・疼痛モデルの実験においては、OXT-SAPもしくはBlank-SAP投与3週間後のラットに対し、両側足底部皮下に5%ホルマリン溶液(ホルマリンテスト)の注射を行い、疼痛逃避行動について観察した。結果として、慢性炎症・疼痛モデルラットでは、Blank-SAP投与群に対してOXT-SAP投与群において、髄腔内投与ではarthritis indexの増悪、第4脳室内投与では関節炎発症時に認める摂食抑制の低下が認められた。また急性炎症・疼痛モデルラットでは、Blank-SAP投与群に対してOXT-SAP投与群は、髄腔内投与において疼痛逃避行動の増加が認められた。すなわち、慢性炎症・疼痛モデルラットにおいて、OXT受容体は脊髄レベルでは炎症、脳幹部レベルでは摂食に関与しており、また急性炎症・疼痛モデルラットでは、脊髄レベルにおいて疼痛の閾値に関与していることが示唆された。以上の結果から、OXTが摂食および疼痛応答に関与していることが明らかになった。
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