研究課題/領域番号 |
25462392
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
三瀬 節子 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (00269052)
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研究分担者 |
土井 貴裕 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (60227684)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨代謝 / マクロファージ / NF-kB / 炎症性サイトカイン / オステオマック |
研究概要 |
転写因子NF-kBのRelAを欠損したマウスの胎児肝臓細胞を、致死量のX線照射した別のマウスに移植すると、このマウス(以下RelA欠損型キメラマウスと呼ぶ)は骨形成の低下により骨粗鬆症の病態を呈する。このマウスの骨形成の低下がマクロファージの機能不全によることを以下の実験により明らかにした。 1.野生型骨髄マクロファージは、RelA欠損型キメラマウスの骨形成の低下をレスキューする。野生型マウスの骨髄からF4/80陽性細胞をセルソーターによって単離し、RelA欠損胎児肝臓細胞とともにX線照射した別のマウスに移植した。RelA欠損型肝臓細胞を単独で移植したマウス比べ、骨形成が野生型キメラマウスと同程度までに回復した。 2.RelAをマクロファージで特異的に欠損させたマウスでの骨の状態の解析。マクロファージで特異的にRelAを欠損させるLysM-Cre +/-; RelAflox/-マウスを作製した。このマウスはそのままでは骨粗鬆症にはならない。しかし、このマウスの骨髄細胞を採取し、X線照射した別のマウスに移植するとRelA欠損型キメラマウスと同様に骨粗鬆症になることを発見した。このことは、X線照射によって引き起こされた炎症反応が骨粗鬆症の発症に重要であることを示唆している。 3.野生型とRelA欠損型マクロファージの特性の違い。RelA欠損型キメラマウスから回収した骨髄マクロファージの遺伝子の発現パターンを、野生型キメラマウスのものと比較した。RelA欠損型マクロファージは、炎症性のマクロファージの特徴を示すサイトカインや一酸化窒素生成酵素の発現が高いが、組織修復に関わるマクロファージの遺伝子発現が低かった。RelA欠損型キメラマウスでは骨髄内に炎症性のマクロファージが多く存在し、そのことが骨芽細胞の骨形成を支持できない理由であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題でのまず第一の目標は、骨形成におけるマクロファージの役割を明らかにすることである。その点に関して、①野生型骨髄マクロファージによるRelA欠損型キメラマウスの骨形成のレスキュー実験、②マクロファージ特異的なRelA欠損マウスの骨の表現形解析によって、概ね証明することができたため。また、RelA欠損型マクロファージの特性の解析についての実験に着手することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はマクロファージがどんな分子を介して骨形成を支持しているか、そのメカニズムの解明を行う。我々は、既にプロスタグランジンE2(PGE2)がマクロファージから分泌されることによって骨形成を支持しているのではないかとの仮説を立てている。その根拠として 1.RelA欠損型キメラマウスの骨髄マクロファージでは、炎症性のマクロファージが多く誘導され、治癒製のマクロファージが少ないこと。 2.RelA欠損型キメラマウスの骨髄マクロファージでは、炎症性マクロファージのマーカー遺伝子の発現が高いが、その中で、PGE2の合成に関わる遺伝子シクロオキシゲナーゼ-2の発現のみが低い。 3.PGE2は、炎症性マクロファージから治癒製のマクロファージへの「切り替え(スイッチング)」に関わることが既に知られている。 この仮説を証明するために、シクロオキシゲナーゼ-2のマクロファージでのコンディショウナルノックアウトマウスや、その骨髄細胞移植マウスの骨形態計測を行うことによって、PGE2の骨代謝への影響を調べる。その結果によって、マクロファージがどのように骨形成を支持しているかを明らかにする。
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