研究課題
転写因子RelA欠損型の造血幹細胞を移植したマウスは、著しく骨が減少し骨粗鬆症となると共に、造血幹細胞ニッチが悪化するためにリンパ球が減少しミエロイド系の細胞が増えるという造血異常を起こす。骨髄移植後の骨組織や造血幹細胞ニッチへの悪影響は、RelA欠損型移植マウスに限ったものであるか、それとも通常の野生型の造血幹細胞を移植した時も考えなければいけないリスクであるのかを明らかにするために、野生型の造血幹細胞移植を行ったマウスと、同週齢の何もしていないマウスとの骨組織および造血を比較した。骨髄移植は9GyのX線照射後に行い、3ヵ月後に解析した。大腿骨・頸骨のマイクロCT解析や頸骨の組織切片によって、骨髄移植を行ったマウスでは、骨梁の減少、特に2次海綿骨の減少が著しかった。これは、 pQCT解析でも明らかで、2次海綿骨の骨塩量・骨密度の減少が見られた。一方、皮質骨や1次海綿骨の骨塩量や骨密度には有意な差はなかった。骨髄移植をしたマウスの骨量の減少の原因を調べるために、2次海綿骨における骨形態計測を行った。骨髄移植を行ったマウスでは、何もしていないマウスと比べ、骨芽細胞数・骨芽細胞面が著しく減少し、それに伴い石灰化面、骨形成速度が減少していた。一方、破骨細胞数・破骨細胞面には有意な差がなかった。このことから、骨髄移植後の骨梁の減少の原因は、骨芽細胞の減少によることを明らかにした。造血能力を調べるために、骨髄、脾臓、末梢血でのBリンパ球、ミエロイド系細胞の頻度を調べたところ、骨髄では、Bリンパ球が減少しミエロイド系の細胞が増加している傾向があったが、末梢ではむしろ逆転し、造血の目立った異常は見られなかった。このように、たとえ野生型の造血幹細胞を移植しても、致死量のX線照射は、骨組織に悪影響を与えているが、それが造血にまでには悪影響を与えないことを明らかにした。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
J Dent Res.
巻: 95 ページ: 665-672
10.1177/0022034516633170
Eur J Pharmacol
巻: 782 ページ: 89-97
10.1016/j.ejphar.2016.04.049.
Arthritis Res Ther
巻: 17 ページ: 251-264
10.1186/s13075-015-0753-8.