研究実績の概要 |
《背景》臨床において精神疾患患者を麻酔する機会は増加しつつあるが,向精神薬による全身麻酔薬作用の修飾は明らかでない.今年度は、臨床的に安全性の高い鎮静剤と期待されている、新しく開発された水溶性・非ベンゾジアゼピン系鎮静剤JM-1232(-)(以下JM)について、JMの中枢神経作用および加齢による修飾効果をin vitroで検討し,静脈麻酔薬チオペンタール(TH)のそれと比較した.
《方法》雄性Wistarラット(6ヶ月齢:E群, n=5)および対照ラット(4週齡:Y群,n=5)を麻酔後,大脳を摘出し海馬スライスを作製した.シャーファー側枝を電気刺激することにより,海馬CA1錐体細胞の集合電位(PS)を誘発した.海馬白板にプレパルスを与え,GABA作動性介在ニューロンによる反回性抑制の効果を検討した(recurrent inhibition enhanced circuit: RIE) 《結果》RIEにおいてJM(1μM)は,E群およびY群のPSを抑制したが(47±25,44±13, %control)両群間に有意差は認められなかった.一方,TH(10μM)はY群のPSを著明に抑制したが(31±10%),E群における効果は有意に少なかった(61±21%). 《結語》 JMとTHは,抑制性シナプス伝達を促進すると考えられた.THの中枢神経作用は加齢の影響を受けたが,JMは年齢依存性が少なかった.
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