脳低温療法の適応となる新生児脳性麻痺のモデルである低酸素性虚血性脳障害マウスをを低温(33℃)・常温(37℃)・高温(39℃)下に24時間置き(全身性脳低温や脳高温で処置し)、脳障害の程度(梗塞巣)をその組織切片のヘマトキシリン・エオジン染色により評価した。その結果、処置3日後における梗塞巣は、37℃と比較して、33℃下では軽減し、高温下では悪化(増加)した。つまり、脳低温療法はHI脳障害後の脳保護効果を示すことが示唆された。そこで、その一機序を解明するため、脳血管内皮細胞の低温(33℃)・常温(37℃)・高温(39℃)培養を行った。脳血管内皮細胞の接着因子とケモカインは脳内への炎症細胞浸潤に重要な役割を担い、脳障害増悪に関与するので、それらの発現を調べた。その結果、接着因子(ICAM-1、VCAM-1)とケモカイン(MIP-2、IP-10、MCP-1)は、37℃に比べ33℃では低下し、39℃ではケモカイン(MIP-2、IP-10、MCP-1)のみ増加した。よって、脳低温療法は脳血管内皮細胞のこれらの発現を低下させ、脳内への炎症細胞浸潤抑制効果をもたらし、脳保護に繋がると考えられた。一方、脳高温下での脳障害増悪には、ケモカイン発現の増加が関与する可能性を示した。
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