研究課題/領域番号 |
25462406
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
渕上 竜也 琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (10381211)
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研究分担者 |
大城 匡勝 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (00315483)
中村 清哉 琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (00363680)
垣花 学 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20274897)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遅発性麻痺 / Dセリン |
研究概要 |
マウス一過性大動脈遮断による遅発性脊髄障害モデルを用い、興奮性アミノ酸のひとつであるグルタミン酸の受容体、N-メチル‐D-アスパラギン酸受容体(NMDA受容体)の補酵素D-セリンが、この病態にどのように関与しているか検討する目的で以下の研究を行った。 雄性C57BL6に全身麻酔下に気管挿管し人工呼吸管理とした。その後、左大腿動脈から動脈ラインを挿入し動脈圧モニタリングを行った。頸部から胸骨正中切開(第二肋骨レベル)し、左総頸動脈を指標に弓部大動脈を剥離した。左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で弓部大動脈をミニクリップで遮断し、さらに左鎖骨下動脈をもうひとつのクリップで遮断し、脊髄虚血を作成した。前年度の研究では、D-セリン合成酵素ノックアウトマウスで脊髄虚血後の遅発性対麻痺の発生が、Wildタイプと比較し差がなかったことから、このモデルでNMDA受容体の刺激が病態に関与しているかを検討する必要があった。そこで、NMDA拮抗薬である(MK-801)の投与が本モデルの遅発性対麻痺発症に影響を及ぼすか検討した。 MK801群と生理食塩水群の2群で遅発性対麻痺発生について検討した結果、生理食塩水群では虚血後24時間以降に下半身の筋線維束収縮を伴う運動低下が認められ、50%のマウスで筋線維束収縮と後弓反張を伴うけいれん発作が誘発された。一方、MK-801群では、筋線維束収縮と後弓反張を伴うけいれん発作は12%のマウスでのみ観察されなかったが、遅発性対麻痺の発症については、有意差は認められなかった。今回の結果では、マウス一過性大動脈遮断による遅発性脊髄障害モデルの病態形成過程において、NMDA受容体刺激が関与する筋線維束収縮とけいれん発作とNMDA受容体が関与しない遅発性対麻痺の発症があると思われた。しかしながら、D-セリンの合成酵素の発現は虚血脊髄で認められていることから、D-セリンが何らかの関与そしている可能性は否定できない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請研究では、脊髄虚血におけるD-セリン合成の増加ならびにD-セリンによるNMDA受容体活性化が遅発性脊髄麻痺の病態に関与していると予想した。しかしながら、NMDA受容体遮断薬の投与によっても遅発性対麻痺の発症が抑えられなかったことからNMDA受容体の関与の可能性が少なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、NMDA受容体拮抗薬の濃度を変更し検討することならびにD-セリンの合成ならびに分解(Dアミノ酸酸化酵素染色、Dアミノ酸酸化酵素ノックアウトマウス)についても検討が必要と思われ、これを検討する。
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