吸入麻酔薬やケタミンを使用した動物実験モデルでは、未成熟期の麻酔薬曝露が神経細胞死を誘発し、学習障害を引き起こすことが報告されている。私たちは、この過程にCl-共輸送体によるKCC2排泄機構の変化及びそれに伴うGABA受容体の脱抑制の関与が示唆されている。しかしながら、臨床分野で広く使用されているGABA受容体アゴニストであるミダゾラムについて、成長期以降の記憶能への影響を検証した研究はほとんどない。本研究では①未成熟期にミダゾラム投与を行い、成長期以降に社会的行動、認知能力に関する行動実験への影響を検討し、②組織学・生化学および電気生理学的手法を用いて投与頻度や容量変化に伴う脳機能への影響を包括的に評価する。さらに③Cl-共輸送体の一つであるKCC2の選択的活性化薬剤であるCLP290を投与することにより、これらの現象が抑制されるかを検証してきた。①に関して、ミダゾラム30および50mg/kgを3日間連続投与することにより、成長期以降にADHD様の行動を呈することを明らかにした。また②組織学的には、投与直後にapoptosisが生じていることが分かった。またこうした行動をCLP290 25mg/kg投与によりレスキュー出来ることが明らかとなった。
|