研究課題/領域番号 |
25462409
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小川 賢一 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (10233412)
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研究分担者 |
内本 一宏 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50710951)
後藤 隆久 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00256075)
紙谷 義孝 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (90381491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 急性侵害性疼痛 / 海馬 / 記憶学習 / 抑制性回避学習 / 術後痛 / 術後認知記憶障害 |
研究概要 |
平成25年度は、昨年度までの成果を踏まえて、開腹モデルラットを用いて、一試行抑制性回避学習試験(Inhibitory avoidance test: IA)を再度実施し、引き続き海馬検体に対してWB法を用いて生化学的検討を行った。生後4週齢目のSDラットを用い、2.0%イソフルレン麻酔下に剣状突起下腹部正中を1.5~2cmの長さに切開し、開腹した。開腹後、直ちに3-0絹糸を用いて閉創した。コントロール群として、イソフルレン麻酔を1.8%イソフルレン麻酔に手術時間とほぼ同じ5分間暴露したものを用意した。 疼痛行動の評価は、直接創部を疼痛測定器具で刺激することはせず、ビデオモニターおよび行動量測定装置を用いて行動量が減弱したことをもって確認した。また、疼痛閾値の検証のため、開腹術前と開腹術を行った後3時間後に、測定刺激(von Frey test)を行って評価し、有意な差がないことを確認した。 モデル確認を行った後、開腹術の3時間後、3日後、7日後に、IA testのコンディショニングを行い、さらに24時間後にどれだけ足底への電気刺激を忌避刺激として記憶しているか(テストチャンバーに入らないか)を、テストチャンバーにラットが入るまでの時間で検討した。カットオフ値は300秒とした。その結果、3日目にはやや増加傾向がみられたが、有意な変化は認められなかった。イソフルレン1.8%を2時間にわたり吸入させると、1週間後に有意にテストチャンバーにラットが入るまでの潜時が短縮する( = 記憶障害が生じている)ことが、すでに共同研究者らが見出しており、本結果から開腹術のみの侵襲では記憶学習障害を生じない可能性が示唆された。現在、海馬組織を用いたグルタミン酸受容体に対する生化学的検討(WB法)を進めている。なお、本研究の成果の一部は第61回日本麻酔科学会総会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画にあげた、開腹術後疼痛モデルの作成、自発的行動量測定、抑制性回避学習試験については、順調に実験成果を得られている。海馬グルタミン酸受容体の発現に対する生化学的検討についても順調に実験結果を得られている。このように、平成25年度の実験計画についてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、計画にあげた通り、海馬グルタミン酸受容体の発現に対する生化学的検討(海馬組織のグルタミン酸受容体の発現レベルとリン酸化レベルの変化、それらの調節蛋白の変化を、全組織および、シナプトソーム分画においてウェスタンブロッティングを用いて検討する)をさらに進めるとともに、多点皿電極を用いた背側海馬における細胞外集合電位の長期増強(LTP)の測定についても、海馬CA1領域における神経可塑性への影響を(LTPの抑制)についても検討を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、生化学的検討が順調に進んだ為に要する消耗品の費用が少なくすんだほか、電気生理学的実験を開始しなかったため電気生理学実験に必要な多点皿電極の購入費用等の分が次年度使用額となった。平成26年度には、新たに研究助手を雇用し、繰越分と前倒し分とを使用して、予定実験を完了する予定である。 平成26度は、主としてウェスタンブロッティングによる生化学的な検討と、電気生理学的な検討を主に行うため、動物および抗体と試薬類、また消耗品である多点皿電極の購入のために研究費を用いる。また、効率よく本実験を遂行するための研究助手の雇用も継続するための費用も計上する。また、日本麻酔科学会および、欧州麻酔科学会と米国麻酔科学会において、成果の一部を発表予定であるため、これらにかかる費用も計上する。また、英文査読誌への発表のため、英文校正費用ならびに投稿料なども計上する。
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