研究課題/領域番号 |
25462418
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
下村 泰代 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (80534031)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DIC / 敗血症 / NETs / リコンビナントトロンボモジュリン / 好中球 / 血小板 |
研究概要 |
方法I)ヒト血液から好中球と血小板をそれぞれ精製し共培養した。NETs形成には、血小板を活性化するPAMPsが必要であるため、PAMPsとしてLPSもしくは血小板活性因子であるトロンビン受容体ペプチド(TRAP)を添加し反応させた。DNAと抗ヒストン抗体,抗MPO抗体で染色し、共焦点蛍光顕微鏡で観察した。結果I)好中球と血小板の培養ではNETs形成は認めなかった。しかしLPSやTRAPで刺激することで、NETs形成を認めた。 方法II)方法Iに、リコンビナントトロンボモデュリンα(rTMα)、もしくはHeparinを投与して、NETs形成を確認した。結果II)LPS+Heparin群では、好中球の細胞形態が破壊され、NETs形成も認められた。一方、LPS+ rTMα群では、好中球の凝集は認めるものの、細胞形態は正常に保たれ、NETsの形成もLPS群の大量なNETs形成にくらべ、極めて少なかった。 以上のことから、ヒト好中球と血小板の培養によるLPS誘導性のNETs形成は、rTMαで抑制されることがわかった。 方法III)マウス腹腔内にLPSを10mg/kg投与し、72時間後の生存率が約半数となるような敗血症マウスを作成した。このモデルにLPS投与1時間後から、rTMα 6 mg/kg/day (LPS+rTMα群)または生食(LPS+生食群)の腹腔内投与を開始した。結果III)rTMα後投与による72時間後のマウス生存率は、約50%から約100%に向上した。 方法IV)多臓器不全のターゲット臓器である肝臓で、血栓形成の足場となるNETsを確認し、rTMαがその形成を阻害できるのか検討した。健常マウスの肝臓採取と、方法IIIの薬剤投与プロトコールに従ってLPS投与前とLPS投与8、24時間後の肝臓を採取した。これらの肝臓切片を免疫組織染色し、共焦点蛍光顕微鏡で観察した。結果IV)健常マウスの肝臓ではNETs形成は認めなかった。LPS+生食群において、8、24時間後の肝臓に多数のNETs形成を確認した。一方、LPS +rTMα群の肝臓は、8、24時間後ともNETsの形成はわずかであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進行状況は、申請書の平成25年度の計画通りに進んでいる。 研究結果は、平成25年度の日本集中治療学会、日本SHOCK学会、藤田学園医学会、日本麻酔科学会、American Society of Anesthesiologists学会など多くの学会で発表した。日本集中治療学会では教育セミナーの招待講演、日本麻酔科学会では優秀演題を受賞するなど評価されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究の結果が予定通り進行しているのとその結果をふまえ、下記実験を行う。 I)敗血症時の炎症性サイトカインの血中濃度とrTMα投与によるその変化。LPS投与前とLPS投与8、24、36時間後に、それぞれのマウスから心臓採血を施行し、血清中の多種の炎症性・抗炎症性サイトカインの濃度推移を調査する。 この中で変化が認められるサイトカインを見つけ、それらがrTMαの後投与よって変化するのか検討する。 II)敗血症時の致死因子であるHMGB1の肝細胞での産生と血中濃度の検討、並びにrTMα投与によるその変化。LPS投与前とLPS投与8、24、36時間後に、rTMα群とコントロール群それぞれのマウスから心臓採血により血清を採取し、肝臓も採取する。肝細胞を精製し、ウェスタンブロット法でHMGB1の産生状況を確認する。HMGB1の血中濃度はELISA法で解析する。また、rTMα投与によりHMGB1の肝臓内での産生および血中濃度の上昇が抑えられるか確認する。 III)肝臓内免疫応答細胞の動態。LPS投与前とLPS投与8、24時間後にrTMα群とコントロール群のマウスから肝臓を採取し、肝細胞を精製する。各種抗体で染色し、フローサイトメトリーで、肝臓内の好中球、マクロファージ、単球、樹状細胞(DC)、リンパ球などの増加・減少状態を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該次年度使用額は、本補助事業期間である平成25~27年度の助成金交付予定額に従って申請した平成25年度科学研究費助成事業交付申請書に準じて、補助事業を誠実に遂行し交付金を適正に使用した結果、生じたものです。 平成26年度以降に使用することによって、より研究が進展することが見込まれます。 当該次年度使用額は、すべて消耗品の購入に用いる。 例)マウス購入費、免疫染色用一次抗体:DNA(DAPI)と抗ヒストン(Histon H2A)抗体,抗MPO(myeloperoxidase)抗体、血小板(抗CD41抗体)、免疫染色用二次抗体、FACS解析用抗体各種、試薬;LPS、PBS、FBSなど。
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