研究概要 |
麻薬性鎮痛薬は重要な役割を担っているが、効果と副作用発現量に大きな個人差がある。μ受容体遺伝多型がその一因と推測されるが、homo変異型を独立群とした3群による研究は皆無に等しく、正確な結果が得られていない。海外で変異型が少ないことが原因であり、人種別多型頻度に関する報告もない。複数のμ受容体周辺遺伝子と術中レミフェンタニルの至適量を観察し、責任多型を解明した。また、大陸の人種間比較も行った。 1.μ受容体の遺伝多型(タイプ別頻度): A118G変異(他の変異を含む)をSSCP法を用いてsequence。Primer設定はOPRM1-F1,R1など適宜変更。PCRは35サイクル。他の変異も同様に施行。日本(n=60)、中国上海(n=67)、ミャンマー(n=60)、米国白人(n=60)、フランス(n=48)、南米コロンビア(n=61)、コートジボアールアイボリーコースト(n=57)を解析した。日本人におけるG allele比率は49%であり、中国31%、ミャンマー28%、米国14%、フランス16%、コロンビア15%、コートジボアール8%、より有意に高かった。次にA118G, IVS2+G691C, IVS2+G31Aの遺伝子型頻度とレミフェンタニル至適必要量について、多型3タイプ別に解析した。A118G のhomo変異型では、野生型と比較して、2倍以上を必要とした。他の遺伝子変異は、影響しなかった。日本人については、さらにnを増やし県別に検討を加えている。欧米の治験結果は、日本人には当てはまらない危険性があり、副作用発現に注意が必要となろう。KCNJ6などシグナル伝達系の周辺遺伝子多型については、影響を解析中。遺伝子変異解析法を確立させ、μ受容体における日本人の特異性を解明できた。本結果はテーラーメイド医療の指標となる。
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