研究実績の概要 |
μ1受容体遺伝子(OPRM1)における一塩基多型(SNP)は200か所以上報告されている。その代表がA118Gであり、静脈内に投与された麻薬性鎮痛薬の必要量との関連性について報告されてきた。しかし、 欧米の研究では、この多型分類と麻薬性鎮痛薬の必要量に一致した見解が得られていない。我々は、その原因として、欧米では変異型Gアリルが低頻度であり、結果の解析が3群の比較ではなく、低頻度の変異型GGと薬効の個体差が大きいAGを一つにまとめた2群 比較(AA vs AG+GG)を用いていることが一因と考え、研究してきた。欧米の変異型頻度と比較し、茨城県民を対象とした研究において、変異頻度が逆転する特異性を報告した。その結果、日本国内でも地域差が存在する可能性が考えられ、解析を日本全国に広げ、14都道府県の1,300名について分析した。我が国におけるG alleleの割合に地域差はなく全体で45%であり、米国白人の14%、フランス人の16%、アイボリーコーストの8%より高く、野生型と変異型の割合が逆転していた。次に45名の患者をAA群、AG群、GG群の3群にわけ、術後鎮痛に必要なフェンタニルの量を比較した。術後2日目と3日目にAA群とGG群間に術後鎮痛に必要なフェンタニルの量に有意差を認めた。SNP解析用各種プライマーを設計、OPRM1;A118G,IVs2+691 SNP, IVs2+31 SNP,rs 563649: ANKK1;rs1800497: GIRK2(KCNJ6);A1032G: COMT;rs4680: OPRL1;rs6090041,rs6090043: NACP-Rep1(STR): Orexin receptor2(HCRTR2);rs2653349など解析中。 欧米の治験結果は、日本人には当てはまらない危険性がある。 薬剤の効果に個人差が大きい変異型の割合が高い日本人では、副作用発現にも注意が必要となろう。 患者負担の少ない唾液を用いるSNP解析方法を確立した。
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