【慢性痛の脳をMRIで探索し、メカニズムと予測因子を明らかにする】(25462424)は以下を目的とした、グローバルな脳ダイナミクスを解析する統合的であった。慢性痛に対する主観的評価(アンケート)と、客観的評価(脳MRI結果)を連結し、脳機能画像データとアンケート結果との相関解析を施行し、慢性痛の予測因子を明らかにした上、臨床的診断マーカーのない慢性痛に対し、非侵襲的な脳機能画像を用いた診断を指向する。以上の目的に対して、施行したアンケートは以下の10項目:1.痛みの程度/持続期間/現在の痛みに対する受診歴 2.喫煙・飲酒 3.社会的因子:学歴、年収、職業、仕事・家族の人間関係やサポートの有無、生活の満足度について 4.包括的QOL(生活の質)尺度:SF-36 5.特定健康診査項目 6.(医師記入)診断名、合併症、7.(医師記入)精神医学的問題簡易質問票:BS-POP 8.PCS (Pain Catastrophizing Scale: 痛みの破局化思考スケール) 9.Pain DITECT日本語 10.FiRST (Fibromyalgia Rapid Screening Test: 線維筋痛症迅速検出質問票)。 このうち、グローバル脳ダイナミクス(voxel-based morphometry: VBM解析)による多重回帰解析によれば、Pain DITECT(PD-Q)のみ、慢性痛の多面的評価システムの確立として、患者の帯状回、島、後頭頂葉円蓋部と正の相関を示した。このことは、慢性痛患者の脳、慢性痛症状の発展に「神経障害性痛」要素が、いかに深く関わっているかを示唆する重要な結果と言える。つまり、患者の「神経障害性痛」要素が強ければ強いほど、痛みは長期に慢性化し、QOLを阻害し、社会全体にも悪影響を及ぼす。慢性痛患者のグローバル脳ダイナミクスに直接影響を与えるのは「神経障害性痛」要素が強い。従って、これらの治療には薬物療法のみならず、患者自身のリハビリテーションを目的とした認知改革と、社会復帰が重要である。
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