研究課題/領域番号 |
25462425
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
住谷 昌彦 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80420420)
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研究分担者 |
四津 有人 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30647368)
宮内 哲 独立行政法人情報通信研究機構, 情報通信研究機構, 研究員 (80190734)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 難治性疼痛 / 知覚-運動協応 / ヒト型ロボット / 合目的的運動 / ニューラルネットワーク |
研究概要 |
CRPS type 1や神経障害性疼痛の病態として知覚-運動協応の破綻を想定し、体性感覚系の異常(疼痛)の基盤として運動機能の障害があると仮定し、上肢運動機能と疼痛の関連を明らかにすることを目的としている。上肢運動機能の計測方法として、健常者を対象に、任意の標的に対する上肢ポインティング動作を磁場センサーを用いて計測するシステムを構築し、明暗両条件での上肢の合目的的な動作課題を設定、遂行させる設備を整えた。明条件では上肢の合目的的な運動制御を主として視覚と体性感覚を用いて行っているのに対して、暗条件では体性感覚のみで上肢運動を制御している。その結果、明暗条件で運動の正確さにほとんど差はないが、暗条件のほうが、若干運動が不正確であった。このことは上肢の合目的的な運動制御に対する視覚情報の影響が示唆される。 このような各種感覚情報を統合して実行される運動の脳内表象のモデル化を目的に、視覚(デジタルカメラ)と体性感覚(モーター回転角度)による制御が可能なヒト型ロボットを用いた上肢の合目的的運動の制御プログラムを開発している。さらに、環境座標とヒト型ロボットの身体座標を比較・操作することによって、ヒト型ロボットの合目的的運動を視覚情報の認知、体性感覚情報の認知、運動表象の3段階で修飾することが可能とした。今後、ヒト神経障害性疼痛やCRPS患者の運動障害についてヒト型ロボットに模倣させることによって運動障害の脳内表象の解明に利用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁場センサーによる3次元位置トラッキングを用いて指先のマーカー位置を30Hzで計測することで、視標的に対する上肢ポインティング動作を正確に計測できる環境を整備した。光学センサーではなく磁場センサーを用いることによって明暗両条件でも同じ精度で上肢運動を計測できるため、我々がこれまで明らかにしてきたCRPS患者の視空間認知機構が明暗条件で異なることを運動戦略の相違点として正確に計測できるようになっていると期待している。健常者を対象に上肢の合目的的運動が明暗条件によって若干異なることを明らかにし、予定通りの進捗である。 ヒト型ロボットによるCRPS、神経障害性疼痛患者の運動模倣モデルの構築に向けて、ヒト型ロボットの合目的的運動制御についてのプログラム開発を行った。このプログラムでは、視覚を想定したデジタルカメラによる目標物の位置同定と指先の認知、体性感覚を想定した上肢関節モーター角度の認知、運動内的モデルを想定した運動企図を段階的かつ個別に設定でき、これらの障害パターンの組み合わせによってヒト知覚-運動協応破綻モデルとの関連性を今後比較検討する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度では予定していた進捗でヒト上肢の合目的的運動評価方法を開発した。健常者を対象に明暗条件での運動データを収集するとともに、CRPSや神経障害性疼痛患者の上肢合目的的運動を評価する。これまでに我々はCRPSや神経障害性疼痛などの疼痛疾患の豊富な診療経験があり、被験者のリクルートは問題無く行えると考えている。また、外来診療スペースに一部実験的な居室を持っており、通常診療時に研究への協力を求められる環境であるため、比較的容易に被験者のリクルートを進められると想定している。 ヒト型ロボットの合目的的運動プログラムは、視覚を想定したデジタルカメラによる目標物の位置同定と指先の認知、体性感覚を想定した上肢関節モーター角度の認知、運動内的モデルを想定した運動企図を段階的かつ個別に設定しているが、初年度は全てを正常状態と仮定して動作させてきた。次年度では、これら3つの運動プロセスを個別あるいは組み合わせて障害させた際の運動軌跡を評価し、その結果をヒト神経障害性疼痛あるいはCRPS患者の運動障害と比較検討することによってヒト型ロボットによる知覚-運動協応破綻モデルとして構築する。さらに、既に我々が研究を行い取得している筋への疼痛刺激によるfMRIデータとヒト患者の合目的的運動障害、ヒト型ロボットの知覚-運動協応破綻プロセスを統合、解析することによって筋骨格系疼痛における脳内運動表象とその疼痛関連機序のモデル化に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度において、予想より効率的に執行できたため。 分担機関において、当該年度の消耗品として適正に執行する。
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